20110301

今日を生きた人・・・





先週末に、春の訪れを感じるような陽気だったかと思えば
昨日からまた雪景色です・・・

時々見せる青空は随分と青が濃くなってきて、確実に春の足音は聞こえていますが
まだまだ寒い日が続いています・・・

新人さんが入職する春。人事異動の春。リハセンターの体制が変わる春。色々な変化が訪れる期待と不安が入り混じる春を、前を向く希望のイメージで迎えたいものです。




僕のクライエントのHさん。先日ADOCを実施して、リウマチの母の為に、また母の手伝いをしたいとの想いから各種作業選択を行った彼です・・・


回復期病棟入院から約3週間・・・入院時、重度の右麻痺と、右側への注意が全く向かなかったHさんは、今日から杖を使用せずに、独歩レベルで歩行が自立になりました。


ADLも、入浴に見守り、更衣動作に麻痺側の袖を通す際の指示と軽介助を必要とする以外は全て自立し、病棟ラウンジにある大きな日替わりカレンダーの入れ替えも、彼が毎日行ってくれています。


彼は非常に社交的で、いつも他のクライエントに話しかけて、交流を楽しんでいます。僕の担当する重症度の高いクライエントに対しても、積極的に声かけをしてくれたり、働きかけをしてくれます・・・


今日は独歩自立の初日・・・チームで相談して自立にはしたものの、僕は少し不安もあったため、僕が他のクライエントに介入する際も、積極的に彼を絡めての時間・空間を作りました・・・


起床時、彼は自分で洗顔を済ませると、ラウンジのカレンダーの日付を交換してくれました。あのカレンダーがあるから日付を知ることができるクライエントが沢山います。


朝イチは、重症度の高いSさんへの介入時に、彼はSさんの囲碁の相手をしてくれました。言葉を一言も発しないSさんの状態を彼は熟知していて、彼が持ちやすいように碁石を渡してくれます。USNが重度のSさんが、碁石を置きやすいように、彼は大きな碁盤の中で、Sさんから見て健側に碁石を置いて勝負をしてくれます・・・


その後、彼は服薬指導を受けました。その後僕と一緒にOT室へ移動。上肢機能訓練や歩行量の増えたことによる筋緊張のセルフコントロールスキルの練習。自宅で母の手伝いを想定した、物を運ぶ練習などを行いました。


午後一番で今度は入浴訓練を行いました。ループタオルは今後の生活でも必需品になりそうですが、来週には、シャワーチェアを使用しない洗体動作も可能になりそうです。


その後、PT訓練とST訓練を彼は行いました。その後、僕のクライエントEさんの介入時に、彼を誘い、一緒にOT室に移動しました。彼はEさんの為に、エレベーターを呼んでくれていました。思えば入院時、彼はペースを全くコントロールすることが出来ずに、どんどん加速してしまう歩行が課題でした。今はEさんの歩行スピードに自分のスピードを合わせてくれます。


OT室にはその時Nさんがいました。中学校の英語の教師をしていたNさん。まだ長時間の離床がキツイNさんに、彼は英語で話しかけます。Nさんもそれに同調して、みんなで片言の英語でのコミュニケーションを楽しんでいました。英語での会話の中でも、科学が大好きなこと・・・ナショナルジオグラフィックが好きでよく見ていたこと・・・僕が参加しているスタンフォード大学科学部が実施しているFOLDING@HOMEのことをよく知っていたこと・・・様々な彼の一面を知ることができました・・・あっという間に夕方五時が迫っていました・・・


帰りのエレベーターの中で彼が突然口を開きました・・・


「今日は久しぶりに”生きている”感じがしました・・・」


僕の職場は回復期リハビリテーション病棟です。チームアプローチによってADL能力の向上は円滑に進めることができる環境が整っています・・・


僕達は今日から彼の活動度を独歩自立に変更しましたが、それは彼が母の手伝いを大切な作業に挙げているからであり、物を持って作業する生活を想定していたからです。


彼は先週からT字杖レベルでは自立していました。しかし彼は今日始めて”生きている”と感じたのです・・・自分の体を自分で制御しただけでなく、身のまわりのことを自分で行い、人の役に立つ作業を行い、人との交流を楽しみ、自己実現に向けた作業に従事した、様々な主体的な作業で時間が埋まった”今日”、彼は”生きている”と感じたのです・・・


今日の彼の発言は、リハビリテーションに従事する立場の僕達にとって、あまりにも大切なメッセージだと思いました・・・客観的現象としての変化を評価尺度の全てとするような関わりを作業療法士のアイデンティティと捉えるのではなく、介入関わるクライエント皆が”生きている”と感じられる協業を実践できるOTになりたいと改めて思いました・・・








目の前のクライエントってどんな人?

何を大切にしてきた人?

どんな作業をしてきたの?

その作業はその人にとってどんな意味があったの?

誰の為の作業だったの?

本当にその作業はもう出来ないの?

挑戦したの?

知ろうとしたの?

知ろうとしたけど、うまく共有できなかったら
いつかできる日がくるように、他の準備はしてるの?

意味が無いかもしれない作業を通して、語りに耳を傾ける努力をしたの?

ADLが向上したのはいいけど、
できることが増えてきた効力感を共有して、未来の希望を共有したの?

その希望のイメージから、再び意味ある作業への扉を開けるチャレンジをしたの?





僕の情熱はまだまだ荒削りだけど、

どんなに重症なクライエントに対しても、僕は絶対にその人らしさを諦めない・・・




だって僕は大切な作業に包まれているから僕でいられるんだから・・・











目の前にいるのは人間です。筋と骨の集合ではありません・・・








2 件のコメント:

  1. 私ももっとがんばります!



    (^o^)丿


    明日も宜しくお願いします。



    m(__)m

    返信削除
  2. kibiさん ありがとう!

    僕の印象だけど・・・
    最近ウチのメンバーみんなの臨床力が
    更に研ぎ澄まされている感じがしています。
    それが更に僕の刺激になっています!
    こうやってみんなで刺激し合えるのって
    とても幸せに感じます!

    いつもありがとう(^o^)丿

    返信削除