今まで約三ヶ月間、作業療法を一緒に行ってきましたが、率直な感想を教えてほしいのですが?
「そうですね・・・今後の自分の生活のイメージに対する整理がついた感じです・・・病気になって、どうやってこれから生活していこうかと悩んでいましたが、これから何をしながら生きて行きたいのかの整理が付いた感じです」
そうですか。それは僕も嬉しいです。
「入院してから、体のことや病気のことなど、沢山の説明を受けてきましたが、どれも先の希望が持てない内容ばかりで・・・自分の未来をマイナスの視点で捉えることしかできないでいたんですが・・・
なんと言うか・・・作業療法は、out of blueというか・・・全てマイナスにしか捉えられない毎日から抜け出せる抜け穴のような時間であり、抜け穴のような存在でした」
今までipadを使って、何度かやりたい作業や、やらなければいけない作業を共有してきましたよね?この間、友利さんと一緒に話したときに、ADOCの使用について、シンクロニシティーという表現を使って感想を言っていましたが、もう少し詳しく教えてくれますか?
「自分の考えや、思いや、職員の考えや、これからの生活など、その全てが同じディメンジョンで共有されるような・・・そんな感じでした」
そうですか。とても嬉しい言葉ですね。僕たちの願いは、これからHさんが、自分の生活に満足して、充実した発展的な毎日を過ごせることです。自分の大切な作業を行いながら、毎日を楽しんでください。
「僕は昔から、色々なことを勉強するのが大好きなんですが、昔は、知りたいことがあると、色々と空想しながら歩いて図書館に行きました、そこでワクワクしながら本を探して、調べたり、新しい知識をインストールすることがとても楽しい体験だったのです。でも最近はインターネットを使うようになり、便利にはなりましたが、色々な好きなことの、楽しむ工程が減ったような気がします。それは全てに言える気がします。これからは、今までよりも時間がありますから、好きな作業をしながら、その工程をゆっくりと楽しめたらと思います。」
今日は、リウマチの母の為に、手伝いができるようになって退院したいとの願いを、初回のADOC面接で語ったHさんの退院日でした。いつもは、退院直前になると、今後の生活や入院生活の解釈を前向きにするようなナラティブアプローチを徹底している僕ですが、Hさんにはどうしても単刀直入に作業療法の感想を聞きたかったので上記のような質問をしました。Hさんは、統合失調症で苦しみながら、入院生活を乗り越えました。元々博学であったHさんに、どうしても作業療法を語ってほしかったのです。いつも独特の英語を交えながら話すHさんの今日の語りは、僕にとって一生忘れられない宝物になりました。
Hさんに対して、僕は何度も作業療法の説明をしました。作業に焦点をあてる重要性についても何度も話をしました。単に作業を共有して、作業ができるように支援したのではないのです。
面接など、時間や空間を設定して、改めて作業に焦点を当てる会話をすることを苦手とするOTが多くいます。昔は僕もそうでした。どうしても、何か訓練を行いながら、自然発生的にクライエントが従事してきた作業の話題に触れ、クライエントの意味ある作業を知ろうとするほうが無理なく情報収集ができると考えているOTは多いのではないでしょうか?
確かに容易にクライエントの作業歴に触れることが出来ると思いますが、そこには大きな盲点があります。何気ない会話で表出されるクライエントの意味ある作業は、クライエントの中で、その作業に焦点が当たることは稀であり、通り過ぎるように認識から消えるのです。OTだけがクライエントの意味ある作業を知っても、真の協業とは言えないのではないでしょうか?(勿論そうせざるを得ない状況はありますが)
やはり、OTは、可能な限りクライエントにOTの説明をするべきです。作業が健康に寄与することを伝えるべきです。そして作業に焦点を当てる”作業”を、クライエントと共にするべきです。Hさんが僕に教えてくれました。
~coming soon~