20151019

生活行為向上マネジメント第4回大研修会 in 鳥取








先週の土曜日は昼まで娘と公園で遊んだあと,
午後からは鳥取へ!


日曜日は鳥取県作業療法士会主催の
「生活行為向上マネジメント第4会大研修会」で
作業に焦点を当てた実践と目標設定について
お話しさせていただきました.

今回の研修会開催にあたり御尽力頂いた鳥取県作業療法士会の皆様
そして100名以上の参加してくださった皆様
本当にありがとうございました.


これまでボクも,基礎研修や教員対象の研修に参加してきましたが,
ここまで目標設定に焦点を当てた研修は無かったように思います.
*ボクの知るかぎりですが…


今回の研修では,まずボクが目標設定について
3時間お話しさせていただいた後で,
馬場先生のコーディネートで,
目標設定にフォーカスした演習を行いました.


みなさんもご存知のように,
MTDLPはクライエントの意味のある作業を知り,
アセスメントを行い,実現可能な目標に落とし込み,
俯瞰的に作業の実現に向けた支援計画を立案する流れになっています.


したがって,最初の「クライエントの健康に寄与する作業の共有」の
プロセスが非常に重要になります.


作業療法士は,
世界中の人が大切に思う作業も,
目の前のクライエントだけが大切に思う作業でも,
クライエントにとって意味があり,
その作業がクライエントの健康を促進するのであれば
どんな作業も等価に扱うことができる専門職です.


ですからその作業は,
セラピストの経験や推測によって
導けるものばかりであるはずがなく,
クライエントや親しい人の口からのみ
語られる作業も多々あるわけです.


多くのクライエントは,
自己の健康を作業の視点で振り返った経験など皆無です.
しかもクライエントは,
種々の疾病や障害によって,
生産的で自己実現的な日々を過ごすための
動機を奪われている場合が多いのです.


用意されたシートを用いて,
形式的に紋切り型のように面接を展開しても,
それはうわべだけの目標になってしまうかもしれません.
紋切り型の面接で健康を促進する作業を共有できるほど,
クライエント個人の意味のある作業に焦点を当てた
目標設定は簡単ではありません.


セラピストは,単に作業について質問して聞き出そうとしたり,
リストから優先度の高い作業を選択してもらうのではなく,
クライエントの人となりを深く理解し,
苦しみを共感し理解者となり,
クライエントが自己を振り返ることができるような環境因子となり,
クライエントが心の内を語ることのできる関係性を築き,
クライエントと一緒に明日につながる目標を共創することができる
人間性や知識や技術が求められます.


更にそのプロセスの実行には,
人がどのように動機づけられるのか.
どのような目標設定が人のパフォーマンスを効率的に向上させるのか.
満足とは,不満足とはどのように人間を支配するのか.
またそれを加工するためには何が必要なのか…etc 
様々な知識の基盤も必要です.


今回の研修のコンセプトは,
MTDLPを大切にするために,
そしてこれからの作業療法を大切にするために,
非常に意義のあるものであったと思います.


MTDLPを用いて作業療法をより多くの人に
「みえる」ようにすることは数多くの意義があります.

クライエントや家族の理解や主体性を賦活するため.
他職種との目標の共有や協働を促進するため,
作業療法の効果を共通のフォーマットで世の中に示すため…様々な意義があります.


MTDLPに対して様々な意見があるようですが,
まず協会が作業に焦点を当てることを推進している現状に感謝し,
建設的に皆で結果を出していければと思います.


最後に,MTDLPを大切にするために必要なこと.
それは,ただのツールであるということを理解することです.


MTDLPを上手く使うために必要なことは,MTDLPの練習ではありません.
「作業療法」ができるようになることです.














20151010

30㎝四方の弁当箱











10月18日(日)
鳥取県でMTDLPについて3時間お話します


日本作業療法士協会は
すばらしいWhatを作ってくれました


そのWhatをしっかりと活用するために
みんなでWhyとHowを共有しましょう









20150830

MTDLPを大切にしよう!







 今日は横浜でMTDLP(生活行為向上マネジメント)の教員対象研修に参加させていただきました.研修の内容は,講義で学生に伝える上での要点などをご教示いただけると思っていたのですが,教員に対して更なる啓蒙をお願いすることがメインで,特に内容に触れてはいませんでした.
 研修会の講義自体は1コマ程度だったのですが,その後で会場と主催者による質疑が約二時間ありました.そこでの質疑の内容の一部を紹介しながらボクの感想を書きたいと思います.


 会場より:作業に焦点を当てることを重視すると言っているが,基本的プログラム(ROM訓練や筋力増強訓練など)がかなり重視されており,結局ボトムアップと変わらないのではないか?


 この質問についてですが,基本的プログラム=ボトムアップは少し表現が正確ではないと思いました.参加されていたある先生が,「あくまでも作業目標を達成するために必要な基本的プログラムという位置づけだと思う.だからこそ基本的プログラムという表現は修正が必要かもしれない」と補足されていましたが,ボクも同感です.しかしながら,AMPSが見たままを評価することを重視しているように,作業遂行の問題を考える上で,すぐに非効果的遂行の原因を機能障害に帰結させて考えることはスマートではないと思います.基本的プログラムという項目が,上記の思考を助長しないような工夫や対策は必要かもしれません.
 一方で,日本の作業療法の処方状況をみてみると,超急性期から理学療法を同時に処方されることが多いのが現状です.機能回復や,機能の増悪を予防するうえで,クライエントの作業遂行の土台を整える技術や関心は必要だと思います.しかし私達は人の営み(作業)の持つ力を誰よりも熟知している職種です.心を動かす手段を使って機能の向上を支援できれば理想的だと思います.そして機能が回復することとが,必ずしも意志を伴った作業遂行の改善につながるとは限らないことを作業療法士は知っていなくてはいけないと思います.


 主催者より:MTDLPは良い!ということを伝えるだけでなく,MTDLPをつかったけれど上手くできなかった事例も集積し,原因を究明していかなくてはならないと思います.


 これは少し視点を変える必要があると思いました.そもそもMTDLPを使用して上手くいった事例はMTDLPを使用したから上手くいったのでしょうか?ボクの印象では,おそらく現在MTDLPを使って本当に効果を出せるセラピストは,作業科学などの基礎学問や,各種理論を学んだ方達だと思います.上手くいかなかった事例を検討する前に,上手くいったセラピストの評価〜介入のプロセスの中で,MTDLPの構造に包括されていないどのような要素をセラピストが用いているのかをしっかりと整理すべきであると考えます.そうすれば,より多くのセラピストが,MTDLPを使用した質の高い実践ができるよう,対策を行うことが可能であると考えます.
 

主催者より:急性期や精神科では使いづらいという意見があるので,MTDLPのフォーマットは随時改訂していこうと思います.


 これはどうなのでしょうか?あくまでもボクの個人的な意見ですが,MTDLPのフォーマットはこれ以上改訂しなくて良いと思っています.ただし,生活行為聞き取りシート等のプロセスで,パターナリスティックな意思決定を内包する柔軟さは必要だと思います.これがセラピストの盲目的なパターナリズムを助長することに必ずつながってしまうので問題なのですが…
 そもそもICFは作業療法の理論でなければプロセスモデルでもありません.ICFに準拠したアセスメントで作業療法士の「頭の中」を全て可視化すること自体に無理があります.その脆弱性を,重箱の隅をつつくように周囲が批判し改訂を迫り,改訂を繰り返しながら脆弱性を補完していったとしても,どんどん複雑な用紙が増えるばかりで,多忙を極める実際の臨床現場では形骸化が助長されるだけだと思います.それよりは,ツールとしては現状程度の内容にとどめ,しかし質の高い使用を担保するためには,◯◯や◯◯などの学習が大切です.と表明することのほうが重要なのではないでしょうか?これは教員に啓蒙を進める上でも大切なことだと思います.
 今日の研修では,シラバスの中にMTDLPをを組み込んでほしいとの依頼がありましたが,その依頼に留めるのではなく,MTDLPを多くの作業療法士が効果的に使用できるために,◯◯や◯◯の科目でしっかりと◯◯や◯◯について教育してほしい.という依頼を同時に行うことこそが建設的でかつ現実的・効果的な方策であると思いました.そもそもMTDLPは使用者に技術を与えるものではないのですから.







 しかし今日の質疑を拝聴していて強く感じましたが,話し合いは建設的にしたいですね(笑)10年前を考えてみれば,協会が作業に焦点を当てることを推進してくれているということは,本当に素晴らしいことです.
 協会は,国に作業療法の効果を認めてもらうために日々奮闘してくださっています.国に認められること.OTに普及させること.質を担保すること.複数の課題を一度に抱え,全ての緊張を解くための精一杯の形態が現在のMTDLPなのだと思います.それに対してアラ探しをすることは簡単です.ボク達は協会のお陰で日本という環境で作業療法士を名乗り,保険点数を貰い,家族を養っていることをもう一度考えて,安易に「批判」するのではなく,叡智を集結させながら,実現可能性の高い「提案」をし合っていかなければならないと思います.
 ボクも教員の端くれとして,多くの学生が作業療法の本質を深く理解し,MTDLPをはじめ,多くのツールをクライエントの利益に結びつく使い方ができるよう,そしてそれらの道程の集積の結果が,国が作業療法の効果を認める一助となるよう,日々努力していこうと思いました.
 本日ご講義してくださった講師の方々,そして作業療法の未来の為に,日々奮闘してくださっている協会の方々,本当にありがとうございました.











20150621

また今日から



6月19日〜21日は第49回作業療法全国学会でした.
初日(19日)は午前中郡山で仕事をしてから新幹線で兵庫へ!
夕方到着後,すぐに日本臨床作業療法学会の理事会でした.






学会員をはじめ,OBPを追求する若い作業療法士のみなさんにとって
有益な学会となるよう,理事でじっくりと話し合いを行いました.






その後は三宮の繁華街へ!
三宮はとにかく飲み屋が多いですね(笑)
そしてどの店も食べ物がとても美味しかったです.





初日は2時までお酒を飲んで,
締めにラーメンを食べてホテルにおとなしく帰りました(笑)


二日目(20日)は会場内をゆっくりとまわり,
色々な発表を拝聴しました.






お昼は医学書院さんと澤田さんが編集を担当する新書の打ち合わせ.
ボクも編集協力として参加させていただいています.


OBPを実践したいけど,様々な障壁によって実現が難しい.
そんな人達にぜひ読んで欲しい書籍です.
*来年のOT学会に合わせて発売予定です.


打ち合わせのあとは再びいくつかの発表を拝聴して,
夕方からはボクの発表でした.






今回は大学院で行った研究の発表です.
沢山の方々が質問&ディスカッションにきてくださり,
とても充実した時間になりました.
ポスター前に来てくださったみなさん.本当にありがとうございました.


発表が終わると既に1800が迫っていました.
AMのシンポジウム→午後の臨床という殺人的スケジュールを終えた
竹林さんが車で会場まで迎えにきてくださり,
友利さん,上江洲さん,澤田さんと5人でUSJに(笑)






既に閉園時間が迫っており,アトラクションも1つしか乗れませんでしたが,
アラフォー男性5人でたっぷりとはしゃいできました(笑)






USJのあとは竹林さんに大阪のお好み焼き屋に連れて行ってもらいました.
正直…お好み焼きの概念が変わりました(笑)






上手く表現できませんが,お好みも焼きそばも,
とにかく美味すぎました(笑)


日付けが変わったころ,三宮に戻り仲間さん達と合流,
少し飲んで,今日も2時にはホテルに戻りおとなしく休みました.






最終日(21日)は朝からスターバックス神戸北野異人館店へ.






オシャレな空間でチョコレートクランチフラペチーノ(グランデ 笑)を
朝から完食しました.






その後は三宮の駅前でお疲れさま会.
海鮮をつまみながらこれからの話しをして解散しました.


今回の学会期間を通してずっと感じていた悶々とした感じ…
最後のお疲れさま会ではっきりと分かりました.


詳しくは書きませんが,少し自分が止まっている感じがしました.
この悶々とした感じ…
痛くも痒くもありませんが,二度と味わいたくない感覚でした…


学生指導,論文や書籍の執筆,学会の運営…etc
したいことも,しなければならないことも,することを期待されていることも
山ほどあります.これはとても幸せなことです.


二度とこの感じを味わいたくないのでもっとギアを上げたいと思います.






帰りの新幹線では澤田さんと熱い話しを3時間して東京で別れました.


最後の東京〜郡山間は仮眠を取ろうと思いましたが,
隣の女性の香水がきつく,1つでも五感を塞ごうと
爆音でAKGのニューアルバムを聴いていましたが全く効果はなく,
ずっと読書で気を紛らわしました(笑)


仲間の大切さと素晴らしさを感じ,子供のようにはしゃぎ,
課題と,課題に向かうエネルギーを得た素晴らしい三日間でした. 



【年内の講演予定】

詳細は未定ですが,福島県作業科学研究会で何度かお話しする予定です.


75日(日):大阪府作業療法士会,事業部身体部門主催の研修会でOBPについて4時間お話しします.


89日(日):詳細はこれから正式に広報しますが,東京で目標設定について3時間お話しします.この研修会は,日本臨床作業療法学会の会員特典として実施する研修会です.ベテランでも楽しめる濃い内容で,かつ経験年数の若いセラピストでも明日から活かせるような内容にしたいと考えています.


912日(土):福岡医療団 千鳥橋病院附属城浜診療所OBPについて5時間お話しさせていただきます.


919日(土):新潟県作業療法学会でOBPと面接評価について基調講演(2時間)を行います.


103日(土):京都作業療法実践研究会で「急性期から地域へOBPでつなぐ作業療法」と題して,河本先生,田原先生と一緒に4時間半お話しさせていただきます.


1018日(日):鳥取県作業療法士会、生活行為向上マネジメント推進委員会主催の研修会で目標設定を効果的に行う方法について3時間お話しします.生活行為聴き取りシートや興味・関心チェックリストを上手く使う方法についてお話しします.



1128日(土)29日(日):北海道の小樽臨床作業療法研究会で澤田さんと一緒にお話しします.




20150408

もう桜


今日の夕方
先日卒業した学生からメッセージが届きました


「作業で語る事例報告」のコラムにも登場した彼からです








そしてもう一件
やはり卒業生から電話がありました


新しい職場のことやクライエントのこと
同僚のことなど色々近況を教えてくれました


「今日は会議が長くて…仕方がないんですけど,現場でもっとクライエントのためにしたいことあるのに〜って思いながら会議頑張りました」


ボクは就職した直後
毎日決められた業務をこなすのに精一杯で
「楽しむ」余裕なんてなかったように記憶しています


そして会議に出るときも
「発言を求められたらどうしよう…」なんてネガティブなことばかり考えて
現場でもっとやりたいことがあるのに…なんて考えられなかったと思います.


卒業生の頼もしいメッセージに感動しながら
本当に教員になって良かったって思いました



20150213

第2回 日本臨床作業療法学会「から」





あんな気持ちになると思わなかった
しばらく声が詰まらないように必死で呼吸を落ち着けた


第2回日本臨床作業療法学会最終日
全体会で後輩のI君が事例報告をした


ボクは彼のあの協働を近くでみていて
彼が心からクライエントの未来の行動の変化を願い
日々の支援を行っていたのを知っていたから
声が詰まりそうになった


自ら健康になるための力を持ちながらも
その力に気付くことができない絶望の中で
自分でその力に気づくことを支援し
どう歩いて行けば良いのかを
自分で選択できるように彼は支援を行っていた


その協働の過程と,遠い福島で一緒に働いた後輩が
演者と座長という形で同じ壇上に共創した時間に
声が詰まりそうになった


前日にファシリテーターを務めたセッションも素晴らしかった





皆回復期で焦点を当てていたのは
共通項という名の上澄みではなく
個々人の健康を構成する条件に焦点を当てていた






ボクは学会の全日程を通して
この素晴らしい協働の数々を一般化したいと思った


1つひとつの報告にも力強いメッセージがある
その一片に触れた人が動機づけられ
明日の臨床に変化を及ぼすことは多々あると思う


ボク達は作業療法士が作業療法を心から楽しんで
結果として多くのクライエントに利益を還元することを
根本的な目的として考えている


でもそれは多分メッセージを共感し合うだけでは充足できない


作業療法士が楽しめる作業療法が世の中に認められ
それは具体的には診療報酬とか職場のシステムとかを含めて
クライエントのために回る多くの歯をもった歯車の一枚として
作業療法士が作業療法を楽しめなければいけないと思う


これから少しずつみんなでそれを共創したい










20150105

晴と褻


民俗学や文化人類学において「ハレとケ」という場合
「ハレ」は儀礼や祭,年中行事などの「非日常」
「ケ」は普段の生活である「日常」を表わしている


「ハレ」の語源は「晴れ」であり,晴れ舞台,晴れ着などの
言い回しで使用されているし,対して「ケ」の語源は
普段着を「ケ着」と言ったことに由来する


柳田國男はハレとケの区別の曖昧化が進行していることを指摘しているけど
現在でもハレとケのコントラストは人々の生活に重要な意味を持っている







もう随分昔の話になるけど
365体制を開始した最初の年末


僕はクライエントと話し合い
家族と一緒に初詣に行けるように練習を行っていた
家族からも1週間の外泊願いが出ていた


家族が来院した際にクライエントが初詣を楽しみにしている旨を伝えるとこう言われた


「年末年始もリハビリしてもらえるなら勿体無いから外泊はキャンセルさせてください」








訓練に休日を作ると効果が半減するって叫ばれてたけど
その前にリハの効果ってなんだろう?
どうして作業療法をしているんだろう?


Whyがずっと消えなかった
もちろん僕は休日リハを否定しているわけじゃない
”あの資源”はもっと効果的に活かせるはずなのに僕に力が足りなかっただけ


adaptationやengagementの意味をずっと考えていた