20140730

Bond







フィリップ・ピネルはビセートル病院で
重く冷たい鎖から精神病者を開放した



ピネルは患者の足枷を外しただけでなく
厳格に処方された身体運動や仕事を患者に与えた



いかに行動するかは心身の健康に影響を与えるという仮説
その仮説は今の僕たちの信念そのものだ



どんな作業遂行の連続で生活が構成されるべきか?
その中で人がなにを感じなにを考え
次にどう行動を選択をするのか?



それが僕たちの関心であり
僕たちが存在する理由であり
僕たちの目標であり結果だ








僕たちがクライエントにしていることを
僕たちは僕たちにもしなければならない



ピネルは鎖を外したんじゃない



常識という言葉で許され続けた
根拠なき盲目的な信念を壊したんだ



僕たちも優しい手で明日の僕たちを変えたい



理想と現実は距離がありすぎたけど
理想と現実に悩み続けてきたけど
理想と現実は無理やりには近づかなかったけど




きっと繋げることができるんじゃないかって










20140702

アタリマエ



先日,老年期作業療法学の中で
高齢者の食事について講義を行いました
最初に食事の目的や意義について学生に質問すると



生きるため
楽しみのため
親しい人との交流のため
生活リズムの維持  etc



いろいろな意見がでました
その後はワークショップを行いました



テーマは「高齢者の理想的な食事場面について話し合い
模造紙にその様子をイラストで表現する」にしました



イラスト完成後は各グループにプレゼンをしてもらいました
あるグループはテーブルではなく,座卓での食事場面を描きました
あるグループは,お互いの顔が見えるように円卓を描きました



どのグループも使用するテーブルやイス,その他の環境因子など
それぞれに工夫をこらし,個性が際立つイラストを描いてくれました



全てのグループに共通していた点がふたつありました
それは,その場所が自宅だったこと
もうひとつは,家族全員で食卓を囲んでいたことです



全てのグループのプレゼンが終わった後
最後にフィードバックを行いました



みなさんは,どのグループも
自宅で家族と一緒に食事をとっている高齢者を描きました



住み慣れた場所で,大切な人たちと一緒に食事をする
それは一番大切なことだからだと思います.ボクもそう思います



でもよく考えてみてください
病院や施設で暮らす高齢者の人たちは
その「ふたつ」から切り離された人たちなんです



でも病院や施設で働いていると
毎日みている食堂の景色が「あたりまえ」の景色にみえてきます



作業療法士は,高齢者の食事に介入します
姿勢について介入することがあると思います
摂食嚥下について介入することもあります
自助具を製作・導入することもあります
テーブルやイスについて介入することもあります
その全てが大切な作業療法士の役割です



でもほかにも大切なことがあります
それは,目の前の景色を「あたりまえ」と思わないことです



自分の胸の高さのテーブルが目の前にあり
首にはナイロン製のエプロンを下げて
向かい側に座る人の名前も知らず
白米をスプーンで口に運ぶ



その景色を「あたりまえ」と思わないことです
いつも今日描いたイラストを思い出してください



なぜそのイラストにしたのかを思い出してください
本当の「あたりまえ」を思い出してください



自分で口に運ぶことだけでなく
全量摂取を目指すだけでなく
食べこぼしを減らすだけでなく
ムセを減らすだけでなく




人間を取り戻す支援ができる作業療法士になってください