20141231

2014年振り返り




皆様,今年1年大変お世話になりました.
僕自身,今年は色々な変化があった年でした.


・浜松ではOBPを実践する環境作りについてお話しさせていただきました.

・青梅,沖縄,滋賀,神奈川,福岡,奈良で講演させていただきました.

・福島県作業科学研究会に,友利さん,吉川さんをお呼びし,御講演いただきました.

・「作業で語る事例報告」を医学書院さんから発売させていただきました.

・宮前先生,京極先生に書評を書いていただきました.

・14年勤務した職場を退職しました.

・教員として新たなスタートを切りました.

・10年暮らした家から引っ越しをしました.

・26歳のPAOを手放し,BMW MINIを新たな相棒に向かえました.

・第1回日本臨床作業療法学会が開催されました.

・WFOTでポスター発表をさせていただきました.

・山根先生の新書の書評を書かせていただきました.

・修士論文が完成しました.

・奈良で開催された全国研修会で講演させていただきました.

・週刊医学界新聞のインタビューを受け,恐縮ながら1ページをさいていただきました.

・分担執筆させていただいた新書(来年発売)の最終校正が終了しました.


他にもたくさんのことがありました.
その度に多くの方々に助けられ,
何とかこのめまぐるしい1年を乗り切ることができました.


来年は教員2年目に入ります.
学生によりよい教育を届けられるように,
研鑽を重ねていきたいと思います.


また,作業療法の世界に少しでも貢献できるよう,
高いモチベーションで新たな年を迎えようと思います.


来年は,1月中旬から東京で教員の長期研修,
2月6日,研修終了後,そのまま第2回COT(沖縄)に入ります.


今年1年,本当にお世話になりました.
2015年もどうぞよろしくお願いいたします.

2014年大晦日 齋藤佑樹











20141201

第55回 作業療法全国研修会






12月6日7日,奈良県文化会館で,第55回 作業療法全国研修会が開催されます.
僕は,6日の15:40から第2ホールでお話しさせていただきます.
全国研修会に参加予定の方は,よろしければ会場に遊びにきてください.
以下に抄録を掲載しておきます.



〜作業に焦点を当てた目標設定と実践〜
       学校法人こおりやま東都学園郡山健康科学専門学校 齋藤佑樹

 近年,国内外で作業に焦点を当てた実践が叫ばれている.クライエントの健康に寄与する作業を特定し,目標達成に向けたアセスメントを行い実践へと繋げていく過程は,作業療法士のアイデンティティを明確に示す道標となるものであるが,同時に,極めて個別性の高いその支援の形に,難しさを感じているセラピストも多いのではないだろうか.
 作業に焦点を当てた実践において大切なことは,セラピストが一方的な「指導者」としてクライエントに関わるのではなく,クライエントとセラピストが協働的立場で作業療法の過程を共に歩むということである.これはつまり,クライエント自身が自らの健康を作業の視点で振り返り,主体的に作業療法に参加することを意味している.しかしながら,クライエントが主体的に作業療法に参加することは容易なことではない.
 様々な疾病・障害を呈し,人生の転機ともいえるライフイベントを経験したクライエントは,目の前に現れる作業療法士の役割や,作業療法の専門性について正確に捉えることはまずできない.「リハビリ」という大枠でくくられたその認識は,過去にメディアを通して触れた情報や,漠然としたイメージの中で構築されたものであることが多く,これから始まる日々の協働を想像することは難しい.つまり,作業療法士とクライエントには,これから展開される作業療法に対するイメージに大きな隔たりが存在するのである.
 また,多くのクライエントにとってリハビリとは,いわゆる「障害の治癒」を表す概念として語られる言葉であり,残存機能を駆使し,環境を加工することによってもたらされる作業遂行の改善や,作業療法特有の段階づけの中で,もたらされる能力向上の過程は,クライエントにとって馴染みのないものである.つまり作業療法の難しさには,個別支援の多様性だけでなく,作業療法に対する認識など,様々な要素が内包されているのである.
 このような様々な課題を抱えながら開始される作業療法において大切なことは,クライエントが作業療法について知ること.目標設定に主体的に参加すること.小さな作業の可能化を重ねながら,障害を呈した「新しい身体」で自己実現の体験と解釈を重ねることである.
 セラピストにとっては当たり前の「作業療法」も,クライエントにとっては全く初めての経験であることをセラピストは理解した上で,クライエントの状態に合わせた説明を心がけなければならない.また,作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice ; ADOC)やカナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure ; COPM),生活行為聞き取りシートなどに代表される面接は,セラピストがクライエントの大切な作業を「聞き出す」という姿勢ではなく,クライエント自身が自らの健康を作業の視点で振り返り,振り返りの道程をセラピストに表明し,表明された作業に内包される遂行文脈をクライエントとセラピストの両者が共有し,同じ視線を持った協働者となる姿勢が求められる.更にその実践においてセラピストは,クライエント自身が長期的な目標と短期目標を常に認識し,小さい可能化の積み重ねから肯定的な未来を予見し,更なる動機付けと目標の更新がもたらされるよう,身体面,心理面,技能面,環境面などあらゆる支援を伴走者として行うことが求められるのである.
 作業療法とは,単にクライエントの生活に必要な「動作」を現象的に改善する支援ではない.クライエントが,障害を呈しながらも,よりよく生きる姿を自らに問いかけ,作業を通してその姿を体現し,環境と結びつき,役割を得て,自分の人生を肯定し,更により良く生きようと問い続ける.そんな循環を支えるための専門性の発揮であるべきである.

 本講演では,演者の臨床経験を踏まえ,クライエントとの出会い,協働関係の構築,実践,クライエントの変化等について紹介しながら,作業に焦点を当てた目標設定と実践について述べる.





20141106

勉強会のお知らせ☆



遠く広島に,震災後の福島を作業の視点で考え
作業の視点で考え続けてくれている人がいました


県立広島大学の学生さんが
作業の視点で福島を考え続け
卒業研究をまとめてくれました


そして先日
ぜひ福島の作業療法士に
その成果をみてほしいと連絡をくれました
吉川ひろみさんと一緒に
福島にきてくれるそうです






福島県作業科学研究会

第19回勉強会のお知らせ


日時:平成26年11月24日(月・祝)

        
       13:30〜受付開始

       14:00〜「震災で影響を受けた作業とその特徴」
           県立広島大学 作業療法学科4年 竹内文香氏 丸岡美愉氏

       14:30〜「作業のレンズで見ること」
           県立広島大学 作業療法学科 教授 吉川ひろみ氏

       16:00 終了


会場:郡山健康科学専門学校 本館8階 講堂
参加費:500円(学生無料)


*当研修会は日本作業療法士協会生涯教育ポイントの対象研修となります
 *参加申込み締め切り 平成26年11月15日
*申込み先:sp5e7xr9ゆgmail.com (ゆを@に変えてください)
*メールの件名:「第19回福島OS参加希望」
 本文に参加者氏名,所属,経験年数を記載してください.
*当日は,駐車場に限りがありますので,できるだけ公共交通機関の利用
もしくは乗り合いでのご来場をお願い致します










20140916

東近江実践OT倶楽部さんにお邪魔しました



913日,14日は滋賀県にお呼びいただきました.








まずは日本一の湖である琵琶湖や,彦根城を観光させていただき,
スケールの大きさに驚きました.







その後,初日の夜は,近江温泉病院さんで
面接評価についてお話させていただきました.


近江温泉病院さんは,20数名のスタッフが所属しており,
その半数以上がAMPS認定評価者というすごい職場です.


所属長の石黒先生は,OBP実践を推進するために,
MOHOCMOP-E等の理論をベースに,
またプロセスモデルとしてOTIPMをベースにしながら,
OBPができる職場作りをされています.


このようなすごい職場で僕がお話することはあるのか?
と思いながらお話をさせていただきましたが,
皆様真剣に僕の話に耳を傾けてくださいました.


又,研究会の後は温泉病院の方々や,地域で活躍する方々と,
美味しいお酒と食事をいただきました.









翌日は,東近江実践OT倶楽部さんにお招きいただき,
「作業に焦点を当てた実践のポイント」と題して,
作業の可能化の話やトップダウンアプローチの話,
面接評価の話,職場作りの話など,5時間お話させていただきました.









今回は,たっぷりと時間をいただいたので,
面接評価に効果的な心理アセスメントで用いる技法の話や,
介入の際の注意点として,Festingerの認知的不協和を取り上げ,
クライエントが抱える不協和をどのように現実的かつ肯定的に解消していくのか?


また,作業療法士が安易に使用しやすい用語である自己効力感について,
Banduraの理論を基に,自己効力感にアプローチする際に
必要な情報や方略などについてもお話しました.


このような話を聞いていただくことで,
どうして面接評価でクライエントの主体性に働きかけることが大切なのか?
なぜクライエントが主目標と短期目標の両方を認識できるように
働きかけなければならないのか?


普段僕が面接の話の中で強く訴えている内容の理由が,
少しイメージしやすくなったのではないかと思います.
詳しくお話する時間を頂きまして,とてもお話しやすかったです.


全国には,悩みながらも常に前を向いて頑張っている方たちが沢山いる.
今回もたくさんの刺激をいただきました.


僕ももっともっと勉強して,少しでも世の中の役に立てるように頑張ろう.
そう改めて思えた二日間でした.


近江温泉病院の皆様,そして東近江実践OT倶楽部に参加してくださった
70名の皆様.本当にありがとうございました.








近江牛も美味しかったです(笑)






20140822

イチマイ







どうしてジャクソンは病院にいるの?



それは、彼の足に悪い病気があるからだよ。



どうしてジャクソンの足には悪い病気があるの?



それは、ジャクソンが足を切ってしまって、そこから悪い病気が入ったんだよ。



どうしてジャクソンは足を切ってしまったの?


それはね、ジャクソンが、アパートのとなりのがらくた置き場で遊んでいたら、
足を滑らせた先に、尖ったギザギザの金属があったからなんだよ。



どうしてジャクソンはがらくた置き場に?



それはね、ジャクソンが荒廃した地域に住んでいるからだよ。
そこの多くの子供はそういった場所で遊ぶし、だれもそれを監督していないんだ。



どうしてそういう場所にすんでいたの?



それはね、ジャクソンの御両親が、より良い場所に住む余裕がないからさ。



それはどうして?



なに、ジャクソンの御父上はお仕事がなくて、御母上は病気だからね。



お父さんにお仕事がないって、どうして?



うん、ジャクソンの御父上は多くの教育は受けていないんだ。それで仕事がね。



それはどうして?...
















20140801

状況を用意する





作業療法士は人を治療しません


作業が人を治療します


つまり作業療法士は


作業が人を治療する


状況を用意する専門家なのだと


僕は思っています




20140730

Bond







フィリップ・ピネルはビセートル病院で
重く冷たい鎖から精神病者を開放した



ピネルは患者の足枷を外しただけでなく
厳格に処方された身体運動や仕事を患者に与えた



いかに行動するかは心身の健康に影響を与えるという仮説
その仮説は今の僕たちの信念そのものだ



どんな作業遂行の連続で生活が構成されるべきか?
その中で人がなにを感じなにを考え
次にどう行動を選択をするのか?



それが僕たちの関心であり
僕たちが存在する理由であり
僕たちの目標であり結果だ








僕たちがクライエントにしていることを
僕たちは僕たちにもしなければならない



ピネルは鎖を外したんじゃない



常識という言葉で許され続けた
根拠なき盲目的な信念を壊したんだ



僕たちも優しい手で明日の僕たちを変えたい



理想と現実は距離がありすぎたけど
理想と現実に悩み続けてきたけど
理想と現実は無理やりには近づかなかったけど




きっと繋げることができるんじゃないかって










20140702

アタリマエ



先日,老年期作業療法学の中で
高齢者の食事について講義を行いました
最初に食事の目的や意義について学生に質問すると



生きるため
楽しみのため
親しい人との交流のため
生活リズムの維持  etc



いろいろな意見がでました
その後はワークショップを行いました



テーマは「高齢者の理想的な食事場面について話し合い
模造紙にその様子をイラストで表現する」にしました



イラスト完成後は各グループにプレゼンをしてもらいました
あるグループはテーブルではなく,座卓での食事場面を描きました
あるグループは,お互いの顔が見えるように円卓を描きました



どのグループも使用するテーブルやイス,その他の環境因子など
それぞれに工夫をこらし,個性が際立つイラストを描いてくれました



全てのグループに共通していた点がふたつありました
それは,その場所が自宅だったこと
もうひとつは,家族全員で食卓を囲んでいたことです



全てのグループのプレゼンが終わった後
最後にフィードバックを行いました



みなさんは,どのグループも
自宅で家族と一緒に食事をとっている高齢者を描きました



住み慣れた場所で,大切な人たちと一緒に食事をする
それは一番大切なことだからだと思います.ボクもそう思います



でもよく考えてみてください
病院や施設で暮らす高齢者の人たちは
その「ふたつ」から切り離された人たちなんです



でも病院や施設で働いていると
毎日みている食堂の景色が「あたりまえ」の景色にみえてきます



作業療法士は,高齢者の食事に介入します
姿勢について介入することがあると思います
摂食嚥下について介入することもあります
自助具を製作・導入することもあります
テーブルやイスについて介入することもあります
その全てが大切な作業療法士の役割です



でもほかにも大切なことがあります
それは,目の前の景色を「あたりまえ」と思わないことです



自分の胸の高さのテーブルが目の前にあり
首にはナイロン製のエプロンを下げて
向かい側に座る人の名前も知らず
白米をスプーンで口に運ぶ



その景色を「あたりまえ」と思わないことです
いつも今日描いたイラストを思い出してください



なぜそのイラストにしたのかを思い出してください
本当の「あたりまえ」を思い出してください



自分で口に運ぶことだけでなく
全量摂取を目指すだけでなく
食べこぼしを減らすだけでなく
ムセを減らすだけでなく




人間を取り戻す支援ができる作業療法士になってください