20110630

ルビンの壷






COPMで重度左片麻痺のIさんが4週間前に希望した作業は、

1:上手に排泄がしたい
2:簡単な料理は自分でやりたい
3:家に帰ったら以前のように花を植えたい
4:編み物をしたい

この4つでした。

ベッド周囲の動作練習に、トイレ動作練習、同居の夫への介助法指導、得意の梅干作り、 病棟のベランダにある花壇の世話、手芸・・・etc 様々な介入を行ってきました。

先日、再度面接を実施し、本人の想いの変化を再評価しました。

1:トイレはもっと上手くやれそう、手伝ってくれるお父さんも上手になってきたからこれ  からもっと楽に出来ると思う。
2:毎日御飯を作るのは難しいと思う。お父さんと一緒におかずを選んで買って食べるよう  な方法で食事をしたい。
3:花は大好きだから、家に帰っても、お父さんに手伝ってもらいながら花壇の世話は必ず  続けていきたい。
4:色々な作業をここでしてきたけれど、編み物は無理だと思う。その分花壇の世話など花  にかける時間をたくさん作りたい。

このような語りを聞くことができました。

Iさんは、一つの作業に今後の発展的可能性を感じ、一つの作業は作業形態の変更を自ら提案し、一つの作業にはこだわりをみせ、一つの作業を諦めました・・・

重症度がかなり高いIさん。入院当初は表情を全く変えずに、車椅子座位がやっとという印象でした。実際今でもIさんの活動度は決して高いとはいえません。起居動作一つとっても介助の必要な状態です。病巣や年齢などから考えても、今後大きな機能面・能力面での変化は期待できない状態です。

しかしIさんは、極めて現実的に、そして主体的に自分の作業を見つめることができるように変化してきました。「退院したら全部できる」などといった根拠のない自信を見せるわけでもなく、「もうどうせ何もできない」などと、漠然と未来に悲観する様子もありません。

Iさんだけでなく、主介護者の夫にもCOPMを施行しています。夫は、

1:なるべく安楽に身体介護を行いたい。
2:自分の親の介護で長年苦労をかけた妻の希望をできるだけ叶えたい。

との希望を語っています。

これから、Iさんと夫というユニットが、持続可能で、かつ自己実現的な生活を構築できるように、必要な練習や介助法の指導、各種調整作業を継続していきます。

ちなみにIさんは、今ウチに来ている学生さんのケースです。

学生さんは悩んでいます。トップダウン的な評価や実践をうまくレポートにまとめることに苦労しているようです。でもそこは正直重要視していません。とにかく、作業療法士とは何をする人なのか?それを感じて帰ってもらえればオッケーです。レポートは手伝います。学生はレポートの完成という義務に、かなりの負担を強いられるようです。でも実習は実際のクライエントの声を聞ける貴重な時間です。目の前のクライエントの幸せについて、たくさん考えて、たくさん感じて、たくさん感動して帰ってほしいのです。レポートをまとめる作業が、そのプロセスに直結していればレポートにこだわるのも良いかもしれません。しかし多くの学生は、”レポートはレポート”なのではないでしょうか?





麻痺のグレードやFIMの得点が殆ど変化しないIさんの
大きな大きな変化を感じられるOTになってね!







20110629

今夜の献立を考える前に・・・






僕は殆ど毎晩夕飯を作ります。

メニューは子供を保育園に迎えに行った後に
車の中で考えます。
メニューを考えながら近所のスーパーに向かうのです。

大体車の中でメニューは思いつくのですが、
忙しかった日などは、時々思いつかないことがあります。

そんな時にいつも助けてもらうのは、
スーパーの実演コーナーです。

毎日違うメニューを「今夜の献立」と題して、
スーパーのスタッフが実演・試食を行っています。

これには何度も助けられています。
でも面白いことに、単にメニューを参考にするだけではない
ことが多いのです。

実演しているメニューをそのまま真似るのではなく、
完成品を見ることで、全く別のメニューを思いつくことが多いのです。

今夜はカレーを作りました。
でもスーパーで実演していたメニューはサラダパスタでした。

でも僕は、サラダパスタを作っている場面を見て、
カレーを作ろうと思ったのです。

仕事が比較的早く終わった日は、僕は無意識に
夕方から今夜の献立を考えているんだと思います。

でも忙しかった日は、車の中で初めて献立を考えはじめるんだと思います。

おそらく献立が思いつかない日の僕は、
作業療法士の文脈を引きずったままスーパーに向かっているのです。

それが実演を見ることで、”家事をするパパ”の文脈に移行できるんだと思います。
だから実演を見るとすぐに色々なアイデアが浮かんでくるんだと思います。

そういえば、似たようなことが昔ありました。

久しぶりに実家に帰った時に、
両親に御飯を作ってあげようとしたときのことです。

普段は毎日普通に献立を思いつく僕が、
その日はどんなに考えても、なかなかメニューを決めることができず、
結局母に頼んでしまったという経験がありました。

この日の僕は、おそらく”息子”という文脈だったんだと思います。

クライエントも同じです。
少なくても、殆どのクライエントは、”病人” ”患者”
という文脈で入院生活をスタートさせます。
”手足を治す挑戦者”というような認識のクライエントも多いでしょう。
そのような文脈に支配された状態で、突然自分にとって意味のある作業は何か?
OTに聞かれるわけです。


当然その質問の答えを、すぐに想起できるはずもなく
「仕事以外は特に何も・・・・」というような返答になってしまうわけです。


今夜のメニューを思いつかない日の僕と一緒です。

でも、やりたいこと、やらなければならないこと、やってみたいこと、
これらが全くないクライエントなんていないと思います。
意味のある作業に焦点を当てることができる文脈にいないだけだと思うのです。

ADOCは、ICFの活動・参加の項目に準拠したイラストを手がかりにしながら
クライエントと作業療法士が一緒に作業に焦点を当てて、目標設定を行うことが可能す。
イラストを使用しながら面接を進めることで、
作業的視点で自分の生活を顧みることが難しいクライエントの
嗜好や役割、習慣や義務、興味などの想起をアシストしてくれます。

イラストを使用することで、クライエントが想起する作業や関連する語りを
制限してしまうのでは?と思う人もいるかもしれませんが、逆にイラストを
使用することで、イラストに載っていない作業についても、想起や語りを
引き出すことが可能になることが多いのです。

丁度僕が、実演コーナーを見て、全く別の献立を思いつくときのように・・・
















自分が作業の専門家であることを説明すること・・・


作業的視点で自分の人生を振り返ることができる文脈形成を補助すること・・・


意味のある作業を共有すること・・・


自分らしさを取り戻すために


作業ができるように援助すること・・・


作業をすること・・・


作業に従事したり、作業の可能化に向けた自己の変化に対する


肯定的な語り・解釈を援助すること・・・


クライエントに関わる全ての人に、クライエントの意味のある作業を


知ってもらうこと・・・クライエントにとっての意味や価値を知ってもらうこと・・・


僕の臨床のイメージはこんな流れ。


Aid for Decision-making in Occupation Choice

 








20110627

情熱の余韻は次の一歩のために・・・

埼玉で開催された作業療法全国学会に参加してきました。


クロークは77番(ちょっと嬉しい!ちなみに次の日も7番)


今回の学会は全国からADOCprojectメンバーが集結しました。

ADOCprojectで何と9題のエントリーです。

ぼくも1題ポスターエントリーさせてもらいました。



ポスターも一応ブログのメインカラーであるライムグリーンにしました!
(かっこよかったでしょ?)




予定終了時刻が過ぎても沢山の人に質問を頂き

二時間ずっと喋りっぱなしでした(^_^)

聞いてくれた皆さん本当にありがとうございました。

加えて、僕の後輩のkibiさんが、テーマ演題で発表しました。

なんとたった5題のみの発表です!すごい(涙)


僕の発表と時間が近かったため

何とか発表途中に会場入りすることができました。


かっこよかったよ!(^_^)


二日目は友利さん達の発表!とにかくすごかった!

午前・午後に分かれていたにも関わらず、

どちらの時間もずっと説明しっぱなしです!






1日目の午後、二日目の午前・午後

全て予定終了時間を大幅に超過して

合計6時間、メンバーみんなで対応しました。


会場で声をかけてくれた

沢山の人達に直接話しを聞くことができましたが、

みなさん作業に焦点を当てた介入に関心をもっていること・・・

同時にCLとOTが、協業的に作業に焦点を当てた

目標設定をすることの難しさに悩んでいること・・・

それを強く感じました。




ADOCを使用することで、

CLと一緒に作業に焦点を当て、協業できる経験が積み重なり

OTみんなが自身を持って作業療法を行えるような、

そんな環境ができれば素晴らしいなと思いました。




ADOCprojectメンバーと過ごした三日間は

何にも変えがたい経験になりました。

毎晩夜は作業療法について語り合いました。

みんなそれぞれ別々の分野・フィールドで頑張っている・・・

でもその全てがCLの幸せに繋がっている・・・

そんな仲間との時間は、言葉では表現できないほどに

幸せな時間でした。



この情熱は次の一歩のために・・・






いちゃりばちょーでー(出逢えば兄弟)



20110623

ココロのちず


いよいよ明日から作業療法全国学会です。

今回の学会テーマは、「意味のある作業の実現」です。

すごい!ど真ん中のテーマですね。

今回、ADOC主開発者の友利さんをはじめ、

ADOCprojectメンバー9人がエントリーしています。

僕も今回エントリーさせてもらいました。


P19052 内に秘めた輝きを再び
~失語症事例との意味のある作業の共有、ADOC(作業選択意思決定支援ソフト)の紹介~

6月24日 研究室906 (9階) 14:00~1500


初日の午後に担当させていただきます。

興味のある方は、是非来室していただけたら嬉しいです。

黒いポスターの前で、iPad持ったオヤジがいたら是非声をかけてください。





~ココロのちず~

作詞:MIZUE 作曲:渡辺和紀 編曲:米光亮 歌:BOYSTYLE



大丈夫!さぁ前に進もう

太陽をいつも胸に

繋いだ手 伝わるパワー

願いを捕まえようよ



でっかい波に乗ろう

チカラ合わせて

ときめく方へ急ごう 始まりの合図

今こそ船出のとき 錨を上げたら

七色の風を切り

冒険の海へ



傷だらけ航海だけど

大事なものがそこにある

ピンチなら いつだって ボクが守るから



大丈夫!さぁ前に進もう

太陽をいつも胸に

嵐が来たら 肩組んで その先の希望を見よう

夢のカケラ 集まれば 未来に向かう航海図になる

だから同じ旗の下 願いをつかまえようよ

ボクらはひとつ ワンピース



「ミンナデ ヤレバ デキル!」ココロを合わせて

ワタリドリたちの歌 勇気に変えたら



翼のないボクらでも

自由自在に羽ばたける

気まぐれな空だって 味方にしちゃおう



大丈夫!そう 前に進もう

その涙 雨のように

青い海に帰したとき 情熱がキラキラ光る

アツイオモイ重ねたら

無限大の風を呼ぶ

ずっと同じ星の下

カタイキズナがあるから

奇跡を分かち合おう



大丈夫!さぁ 前に進もう

太陽をいつも胸に

嵐が来たら 肩組んで

その先の希望を見よう

夢のカケラ集まれば未来に向かう航海図になる

だから同じ旗の下

願いを捕まえようよ

僕らは一つワンピース!






20110619

作業療法を好きになってほしい・・・





先月から新たに仲間に加わったWさんがADOCを使用して作業選択を行いました。
これからエピソードや介入内容を入力するところです。キーボードも使いやすいみたい!そしてカッコイイ!



さて、学生さんが来ています。

ウチの実習は、例によって評価開始後すぐにクライエントに触れるのは禁止です。
触れる理由。検査する理由と必要性が生じるまで面接と観察以外は禁止です。

① 作業療法をクライエントと家族に説明する

② クライエントと家族にCOPMを実施。

③ 10dimensionとCOPMの結果を踏まえて、全体像と意味のある作業の把握と共有

④ 作業的存在として、今後クライエントや家族が望む生活を実現するために必要な能力や
   環境因子の評価

⑤ 課題の抽出

⑥ 継続可能な作業形態の検討

⑦ 住み慣れた環境下で、目標とする作業遂行文脈への適応を目指すに当たり、心身両面を考慮
   した作業療法プログラム(する作業・可能化を目指す作業)と心理的配慮方法の検討と立案

⑧ 作業療法介入・再評価

こんな流れで実習を進めています。

最初は戸惑いをみせる学生が多いのが正直なところです^_^;

でもウチはこんな流れで進めています。 

今回来ている学生さんから、印象深い言葉をもらいました。

「作業療法と理学療法って違うんですね」

そうです、違うんです ^_^;

去年来た学生さんは、放射能や風評被害の中で、今年僕たちの仲間になってくれました。

思えば、去年実習に来たときは、かなり衝撃を受けていました。

でも実習を通して作業療法の魅力に気付いて、今では毎日クライエントの為に奮闘しています。

今回の学生さんは、もう就職先は決まっているとのことです。

僕たちの仲間になってもらうことは無理かもしれませんが

ぜひ作業療法が好きで好きでたまらない!

そんなOTになってくれたらと思います。


学生の立場なので、まずは最初の評価ではCOPMを使用してもらいましたが、実習中に、ADOCも経験してもらう予定です。この間、僕がADOCを使用する場面を観察しながら、「すごいわかりやすそうです~」と興奮していました!


~coming soon~




20110612

天真爛漫さを守るために・・・




今日は英語イマージョン教育に力を入れている


保育園に娘と二人で遊びに行きました。


週末だけ一般開放されており、自由に遊具や絵本を


使用することができます。






最近は、子供の屋外での遊びが15分~30分に制限されているので、


遊ぶ場所を探すのに苦労していましたが、


とてもすばらしい施設でした。






エアトラックや鉄棒など、全身運動ができる遊具に加えて、


ブロックや子供用のキッチン、絵本などの知的玩具も豊富です。


約二時間の外出でしたが、娘は相当楽しかったようです。






以前、玄侑宗久さんが、言っていました。


「子供に個性をやたらと求める時代だが、子供に個性など無理に求めなくていい。


子供に最も必要なものは、いつも天真爛漫であることだ」 と。








子供達がいつも無邪気で天真爛漫に毎日を全力で生きられること。


僕たちが一番優先しなければいけないことだと思います。


そのために、偶有性に満ちた好奇心をいつも持ち続けることができる


環境を与えてあげたいと思います。


今、この福島でそれを実現し続けるために何とか行動し続けようと思いました。






本当に楽しいスポットでした。


僕も娘と一緒に夢中になってしまいました^_^;







20110605

人に優しいインターフェース








今日は病棟の園芸用の土をもらうために

祖母の家に行ってきました。

そこでもうすぐ90歳になる祖母に

ipadを触ってもらいました。

最初は操作に戸惑いをみせましたが、

5分後には、自分でタップしたり

フリック・ピンチを駆使して

孫の写真を楽しんでいました。

ipadには詳しい操作方法の書かれた

説明書すら入っていません。

全て直感的な操作が可能です。

難しいことは考えずに

拡大したければ

二本の指で広げればいいし

次の画面に行きたければ

指で横に払ってあげればいい。




もちろんADOCも操作が非常に簡単に行えます。

ipadのような黒物家電に苦手意識を持つ人もいるでしょう

でも本当に簡単なんです。

すこし触ればすぐに操作できるようになります。




評価法は、その内容が素晴らしいかどうかだけでなく

実用に耐えるかどうかが重要です。

一回の実施に何時間もかかる評価は現実的に使えません。

一部の人しか理解できないような複雑なものでは一般化されません。

難解なものはだれも使いません。




ADOCは優しいインターフェースを持つipad上で展開されます。

難しい理論も必要ありません。

クライエントの作業に焦点を当て

クライエントにとって意味のある作業の可能化に向けた

協業に関心があるセラピストならば誰でも使えると思います。




少し話しがそれますが、OTじゃなくても使えます。

つい先日、ウチのSTさんは、

転院するクライエントのサマリー作成のために

担当OTと相談してADOCを使用していました。









祖母は娘の顔を目一杯拡大して

満面の笑みを浮かべていました。









~coming soon~