20140615

だって作業遂行に課題を抱えたクライエントなんだから...


どのクライエントもみんな
最初は不安がとても強くて
意欲なんて持てなくて当然だよね


作業療法のことなんか全く知らないから
説明をしっかりしながら進めないとね


これから何をしていくのか
今月は何をしていくのか
今日は何をしていくのか
クライエント自身が理解することが大切なんだよね


うまくいかないときは
その原因を一緒に考えないとね


一番大切なことはクライエントが成長し
自分で成長していけるようになることだから


あるときは考えてもらうし
あるときは最初から解決策を提示するし
あるときは一緒にやってみるし
その手段は色々あるよね


でもその手段は
こちらの好みで選択されるべきではないし
ましてや受け継がれた「伝統」から選択されるべきでもない


「目標に向かって成長するために今なにを大切にするべきか?」
という問いから選択されるべきなんだとだと思う


可能化ってなんだろうね
こちらが決めた尺度の中で
こちらが決めた水準に達することかな?


適応できること
そして成長していけることだよね


実際の環境で実動作で経験を重ねるって大事だよね
だって人−環境−作業の連環である「作業遂行」こそが焦点だもんね


経験はまぎれもない事実なんだけど
言語化されない経験は
あくまでも整理されない漠然とした記憶の集合でしかないから
やっぱり言語的に「組織化」する作業も大切だと思うんだよね


でもそれは体験の機会を奪ってまで行うことじゃないよね
特に実動作の機会を奪って行うなんて本末転倒だと思う


経験を言語的に組織化する能力って
経験と言語的な組織化という一連のプロセスを何度も重ねないと
できないんだよね


だから最初から答えを提示した方が良い場合って多々あるんだよね
もちろん提示して終わりじゃだめだけどね




言い忘れたけど
これは臨床の話しじゃなくて学生指導の話しね


根本的な言い方をしてしまえば
臨床だけじゃなくて,学校の講義も,実習指導も
ボクはぜんぶ作業療法だと思って考えてるんだよね
そう考えれば何をするべきかわかるよね


クライエントが家事をできるように
作業療法士がクライエントと作業療法をする


クライエントが釣りに行けるように
作業療法士がクライエントと作業療法をする


作業療法学生が作業療法をできるように
作業療法士が作業療法学生と作業療法をする


ぜんぶ一緒だと思わない?


それぞれ必要な「手段」が異なるだけ


クライエントの適応と成長を一番に考えて

今とるべき手段を選択するだけ





20140603

「人を健康へと導く作業の力」と「想い考え感じる存在」と「実行する仕組み」




先週と先々週
1年生の基礎作業療法学で「花まり」を作りました.



4〜5人の共同作業で折り紙を使い
無事に作品が完成しました.



作品が完成した後で,レポート課題を出しました.
課題の内容は



課題:今回の作業は,どのようなクライエントに導入したら効果的だろうか? 例を1つ挙げ,説明しなさい.また,導入する際に,作業療法士としてどのような点に注意を払うべきか? 考えを書きなさい.



皆,それぞれ講義の内容を咀嚼しながら考えを記載してくれました.




上肢に障害のあるクライエントの機能回復として

上肢に障害のあるクライエントの健側の技能向上として

下肢に障害のあるクライエントが上肢を使用して自信を取り戻すため

座位が長時間とれないクライエントが作業に没頭することで

苦痛を感じずに体幹機能を強化するため

認知症のクライエントが過去を想起し充実した時間を過ごすため……etc



色々な例を挙げてくれました.
また,導入の際の注意点に関しても



心理面や環境との相互交流

成功体験の蓄積

難易度調整

季節感や馴染みの有無

雰囲気作り……etc



それぞれの考えを記載してくれました.


今日はレポートの返却日
全員に手紙を添えて返却しました








基礎作業療法学「花まり」レポートの振り返り

花まりの対象疾患

 身体障害,精神障害,発達障害,認知症…etc どのような疾患のクライエントにも適応できる作業です.大切なことは,その作業を導入するにあたり,作業療法士が何を考え,何に注意を払っているかです.

その作業の意義は何か?

目的作業としての導入
 もし目の前のクライエントが,その作業に対し,内的動機や必要性を感じながらも作業遂行障害を呈している場合,その作業は目的作業としての意義を持ちます.
手段的作業としての導入
 もし目の前のクライエントが,心身に障害を持ち,特定の機能の回復を目的に作業を導入するのであれば,その作業は手段的作業としての意義を持ちます.
実存的作業としての導入
 もし目の前のクライエントが,作業を剥奪され,作業的存在としての危機に陥っており,時間と空間を占領できる媒体を提供することを目的に作業を導入するのであれば,その作業は実存的作業としての意義を持ちます.

作業を導入する上での注意点は?

 注意点は,その作業を導入する目的から考えると理解しやすいと思います. 
 作業を目的的に利用し,その作業の可能化を目的とする場合,クライエント自身がその目的を理解し,目的を達成するために常に動機づけられながら自己解決能力を賦活され,それを体現化していくことができるような支援が必要となります.
 作業を手段的に利用し,特定の機能の改善や学習を目的とする場合,標的とした機能の改善や学習に寄与できるよう,綿密な課題の選択や難易度調整が必要となります.また,標的部位は限局していながらも,他の身体部位との協調性等にも目を向けながら,課題の内容を調整することが必要となります.
 作業を実存的に利用し,作業的存在としてのより良い体験の提供を目的とする場合は,クライエントが能動的に作業に従事しているか.防衛機制など,負の感情の表出を賦活していないか.その体験が,過去や未来のイメージや語りをまとめ上げる肯定的な因子となっているか.などが重要となります.
 当然,上記の3つの目的は,単独で採用される場合もあれば,同時に複数採用される場合もあります.

・おわりに

 つまり,作業療法士が作業を提供する際に大切なことは,クライエントに対して,どのような目的でその作業を提供しているのかということです. 
 その作業はクライエントが自ら希望してくれるかもしれません.クライエントが必要に迫られている作業かもしれません.過去に遂行したことがない作業の場合もあるかもしれません.また,作業的存在としての自己を客観視できないクライエントには,作業療法士が父権的に作業を選択し,提供しなければならない場合もあると思います.
 どのような場合であっても,その作業が「作業療法」としての価値を持つかどうかは,みなさんが,目の前のクライエントに提供する作業の目的を常に意識し,心理面や難易度を意識しながら課題や環境を適切に調整できるかどうかにかかっています.
 そのために,皆さんは,作業療法概論や基礎作業療法学などの「人を健康へと導く作業の力」を理解する知識,心理学や哲学などの「想い考え感じる存在」を理解する知識.解剖・運動・整理などの「実行する仕組み」を理解する知識が必要なのです.

                                                        齋藤佑樹