20120525

「文化から作業を捉える」〜第二回福島県作業科学研究会〜


副会長のMさんの字はいつ見ても味があります(^^)



5月22日,福島県作業科学研究会第二回勉強会が開催されました.
今回は福島県内各地から58名の参加をいただきました.
みなさん本当にありがとうございました.

今回は,「文化から作業を捉える」と題して,
関西福祉科学大学教授の酒井ひとみ先生をお招きして
講義+ワークショップを開催しました.

まず最初に,酒井先生から沖縄の文化に関する講義を頂きました.
酒井先生自身が,沖縄県の北中城村に住民票を移し,参与観察と聞き取りによって収集した
データを紹介.「老人の社会的諸活動とその変化」「老人の概念整理」「土地の人々が捉える理想的な長寿」などについて紹介してくれました.

高齢者が地域で尊厳を守って生活するためには,当事者の価値観に加えて,
その土地特有の老人観を含んだ文化的側面を包摂した支援が重要であり,
それらを抜きにした支援は,作業的不公正を生じさせる危険性があることを
改めて認識することができました.

講義の後は,ワークショップを行いました.
テーマは,「ある人ある地域にとっては当たり前だけど,実は当たり前じゃない事」です.
自分の家族やクライエントを思い出して,個人や地域特有の行事やこだわり,考え方
などについて紹介し合いました.


平日の夜に皆さん本当にありがとうございます.


クライエントの意味のある作業に関わる場合,地域特有の価値観やルールなど,「特有の前提」を考慮してクライエントと作業に向き合っていくことで,より効果的な作業療法が可能になることを感じてもらえたと思います.

勉強会は,19:00〜21:00.なんと酒井先生,翌朝大学で講義なのに来てくれていたんです!
22:40の高速バスで福島から大阪に戻られるとのこと!
勉強会終了後,急いで食事.




会津名物のソースカツ丼を食べていただきました.

食事を終え帰りのバスターミナルに向かう車中,
「日本の作業療法はとても恣意的な印象を受けることが多い」
という先生の言葉が印象的でした.

今回の勉強会は,僕自身自分の作業療法を改めて見直すとても貴重な機会になりました.
酒井先生,本当にありがとうございました.



自分の価値観というフィルターを通してクライエントの生活を評価して,
疑問を抱くこともなく支援を行う.自分の価値観の中で「成功」を定義する.
それでもクライエントは最後に「先生ありがとうございました」と言うのです.

自戒を込めて



20120510

人間作業モデル一日講習会・評価コース(福島会場)開催のご案内

この度,作業療法の概念的実践モデルである人間作業モデル一日講習会・評価コースを
下記の要領にて開催する運びとなりましたのでご案内申し上げます.

日時:2012年6月24日(日)9:00~17:00
場所:郡山健康科学専門学校
講師:山田 孝 日本作業行動学会会長 目白大学大学院リハビリテーション学研究科専攻長
内容:1 事例を通しての人間作業モデル(第3版)の紹介
2 人間作業モデルの歴史
3 人間作業モデル(第3版)の評価法概説

受講料:学会会員5,000円 非会員7,000円 学生・大学院生4,500円
*当日,本学会に入会された方は,会員の受講料になります.
*日本作業療法士協会生涯教育制度において1日参加で1ポイントが認定されます.

申し込み方法:参加ご希望の方は,氏名(会員・非会員・学生・大学院生いずれに該当するか記載),
所属施設名,所属施設住所,連絡先(TEL・FAXまたはE-mail)を記載し,郵送かE-mailにて
お申し込みください.E-mailでのお申し込みの場合は,件名に「人間作業モデル一日講習会・評価コース
<福島会場>参加申込」,メッセージ欄に「氏名」「会員・非会員・学生or大学院生の別」「所属施設名」
「所属施設の郵便番号・住所」を記入してお送り下さい.所属施設以外の連絡先をご希望の方はその旨を
ご記入ください.講習会参加確認書,公文書,会場アクセスを送付いたします.


申込締切: 2012年6月18日(月)
申込 および 問い合わせ先:
116-8551 東京都荒川区東尾久7-2-10 首都大学東京健康福祉学部 石井良和
TELFAX 03-3819-7351 E-mail: objim山jsrob.org(山を@に)
主 催日本作業行動学会



福島県作業科学研究会 第2回 研修会のおしらせ

福島県作業科学研究会,第2回研修会を開催します.

テーマ:「文化から作業を捉える」
講 師:関西福祉科学大学 酒井ひとみ先生
会 場:郡山健康科学専門学校 第三校舎 3F 講義室
開催日:平成24年5月22日(火)
時 間:19:00〜20:30
参加費:500円

*申し込みについて
 所属,氏名を明記のうえ,FAXまたはE-mailにて申し込みください.
*連絡先
 太田西ノ内病院 作業療法科 宗像暁美
 TEL:024-(925)-1188
 FAX:024-(925)-7791
 E-mail:okamoto侍ohta-hp.or.jp(侍を@に)

多数のご参加をお待ちしております.

「どう生きたいか」を共有する


僕の職場では毎週水曜日の夕方,面接評価研修があります.


職員はADOC,COPM,OSA-2,OPHI-2の4班に分かれて
面接評価のスキルを身につけるトレーニングをしています.
このグループは3ヶ月でローテーションします.
1年間でこの4種類の評価法を臨床で使えるようにするのが目標です.

僕は今,COPM班に所属しています.
今日は模擬面接+ディスカッションを行いました.
OT役,CL役,観客に分かれてCOPM面接を実施.
面接後,それぞれの立場から意見を出し合います.

CL役をした2年目のEさんの感想です.

質問された時,自分には全く答えが用意できていないことに気づきました.
そんなことを考えたことも無かったという感じです.
でもいろいろ伝えたいことがありそうだという感覚も同時にあったんです.
私には答えを言う前に考える時間が必要でした.
面接の最初にYさん(OT役)が,「一緒に考える時間にしたい」と言ってくれたので,
私は焦ったり,安易に「何もありません」と回答せずに
自分の課題や希望について考えることができました.

ちなみにEさんの希望は,「毎日ちゃんと料理を作りたい」でした.
Eさんは,毎日帰宅時間が遅くなりがちで,簡単に食事を済ませてしまうことが
多いとのことです.料理をちゃんと作りたい理由は,
「大人として,自分の食事もしっかり作っていない現状に疑問を抱いている」
というものでした.

観客役をした2年目のI君の感想です.

何をしたいのか?だけではなくて,なぜしたいのか?を共有したことで
その後の介入内容が大幅に変わるということを感じました.
もしEさんの料理の理由が,「栄養をしっかり摂りたい」だったら,
手軽に栄養補給をする手段はたくさんあります.
「料理が大好きな趣味」だったら,
バリエーションを増やすことや時間の確保が課題になります.
今回のように,「帰宅が遅く,簡単に食事を済ますことが多いので,
大人としてもっとちゃんと料理がしたい」という理由ならば,
今回の場合,仕事を早く終えることなどが主な課題になります.
「なぜ」を一緒に考えることってとても大切なことだと思いました.

このような研修・ディスカッションを毎週行っています.




作業に焦点を当てるということは,
その作業を通して「どう生きたいか」に焦点を当てるということだと僕は思います.

自分自身が「どう生きたいか」を具体的にイメージしてみると,
そこには作業遂行が核となった物語が立ち現れます.

作業療法士がクライエントと共有するべきことは,
その物語と物語を構成している作業遂行です.

だから動作は「人」で語ることができても
作業は「人-環境-作業」の連関でしか語ることができないのです.

Yさんは「作業を教えてほしい」とは言わず「一緒に考える時間にしたい」と伝えました.
Eさんは「考える時間が必要だった」と言っています.

面接評価は「一緒に考える」という姿勢が何よりも大切です.

でも障害を持った実際のクライエントは,不安と絶望の中にいます.
「一緒に考える」ことは容易ではないかもしれません.

だからイラストをヒントにできるADOCは有効なのだと思います.


「どう生きたいか」を共有するために.


作業療法をするために.