20110705

向こう側への憧れ・・・



先日全国学会にも一緒に参加したYさんが頑張っています。

重度の左麻痺のクライエントTさん。

体幹機能が著しく低下し、車椅子座位で簡単な作業を行う際にも

大きく姿勢を崩してしまう事例です。

身辺ADL訓練に加えて、Tさんの食事を主な課題に挙げていました。

当初、Tさんの集中困難をチームで問題に挙げ、

食事の際は、皆が集まる食堂での食事を取りやめ、

扉を閉めた個室での自力摂取に向けた介入を始めました。




僕は度々その個室を訪ねていましたが、

なかなか介入が上手くいっていないようでした。

一時間かかって何とか摂取する・・・

そんな日もあったようです。




そこで、MOHO10の側面から

Tさんの状態をリーズニングすることをYさんに提案しました。

僕が自作したリーズニングシートを渡し、

Yさんにシートを埋めてもらいました。

Tさんの語りに耳を傾けたり、観察を続けていくうちに

色々な要素が見えてきました・・・




漬物作りや料理にかなりの価値を見出していたこと・・・

入院している今の環境が苦痛でたまらないこと・・・

毎日の食事の時間が憂鬱なこと・・・

病棟では、殆どの時間を無為な時間が占め、

作業剥奪状態に陥っていること・・・

そのことが、Tさんの「もう何もできない」という感情を

助長していること・・・

そして

遠くの食堂から聞こえてくる、他患の声が気になっていること・・・

様々なTさんを取り巻いている要素が視覚化されてきました。




そこでYさんは気付いたようです。

集中困難=個室で対応

このアセスメントはスタッフが勝手に決め付けた

効果的環境“であったことに・・・





Yさんはすぐにチームと交渉し、Tさんの食事場所を

皆と一緒の食堂に変更しました。





集中困難だから避けたほうがイイ・・・

当初そう誰もが思った食堂で、

Tさんはほんの数日後、

食事を普通にたいらげたのです・・・

そして、Yさんに向かって

「みんなで食べると旨いない」

と、福島なまりたっぷりの笑顔で語ったのです・・・





僕たちはクライエントの利益を考えていつも評価・介入を行います。

「このような状態のクライエントには、このような介入が望ましい」

という暗なプロトコールを沢山もっているのではないでしょうか?

しかしそれは、個人を取り巻く要素や語りに

耳を傾けるという姿勢とともに活用しなければ、

“思い込み”にもなりかねません・・・

自分の頭の中のフレームを一度壊して、

クライエントの語りに耳を傾けて

フレームを再構築する・・・

簡単なようでなかなか難しいスキルです。




Yさんはその後、kibiさんの助けも借りながら、

Tさん自慢の漬物作りを行ったり、病棟の野菜の世話を行ったりと、

Tさんの自分らしい生活を支援するために奮闘しています。





 リフレーミングできる人・・・


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