20110424

POT !!







回復期病棟には、発症から約二ヶ月以内のクライエントが入院してきます。脳卒中という人生最大のアクシデントに見舞われて、まだ自分の今後の人生がどうなるかも分からずに、急性期リハを終えたクライエントが転院してきます。

作業的存在としての“今”というのは、過去の作業経験の道程と、そこから生じる未来の作業イメージを統合した現象です。僕たちは、過去の作業経験と未来のイメージを、言語的、もしくは、非言語的に感覚として認識し、統合できているからこそ、必要以上の不安や混乱に陥らずに、前を向きながら今“の自分を定位できるのです。

しかし、クライエントはどうでしょうか?過去の作業経験は、その殆どが健常な身体に依存して遂行してきたものばかりです。障害を負った“今”、過去の作業経験を未来のイメージに繋げる必要条件の自己認識下における主要部分を失ったのです。

過去の経験と未来のイメージが繋がらないということは、自分が歩もうとしていたレールから脱線してしまったことと同意です。不安や混乱が常に精神を支配し、その心身状態から生じる希望は、作業的存在としての過去・現在・未来の再統合へとは向かわずに、基底還元論的思考のもとに機能回復や生理的欲求の解消へと導かれます。

そんな状況の中、回復期リハビリテーションはスタートします。ADLや機能訓練を軸に、毎日9単位のリハビリテーションが提供されます。これは一見すると、目標に向かって新しい歩みが始まったと考えることもできます。しかしこれは、自分が歩いてきた作業的存在としてのレールから、異なるレールに自分の車輪を載せ変える行為なのかもしれません。

ADLや歩行能力が向上してくると、クライエントは更なる能力向上や歩行能力の向上を求めるようになります。それは入院中に限定された感情ではありません。退院しても、それが、たとえ歩行レベルでADLが全て自立レベルに達しての退院だとしても、多くのクライエントは、更なる機能回復や歩行能力の向上を目指すのです。

僕はそれを否定するわけではありません。それが“人生の目標”“生きがい”になってしまうことに警鐘を鳴らしているのです。その為にも僕たちは、ADLや機能訓練の“在り方”をもっと真剣に考えなければいけません。なぜADL能力の向上を目指すのか?。なぜ機能回復を目指すのか?。これをもっと考えなければいけません。

残念ながら、その答えは、あなたが1人でどんなに考えてもたどり着くことは出来ません。なぜなら、その答えは、クライエントしか知りえないものだからです。クライエントの人生を作業的な視点から評価し、目の前のクライエントにとって意味のある作業を共有し、社会資源、環境、身体機能、予後予測などを統合しながら、必要な介入方法をクライエントと共に決定していきます。その階層的な構造の中に、ADLや機能回復は存在するべきなのです。しかもそれは、あなたの認識の中でのみ階層的思考を成立させることで良しとするのではなく、可能な限りその思考のプロセスをクライエント自身と共有するべきです。

そのプロセスを共有し、介入の道程の中で常にクライエントが、作業的存在としての自己実現に視点が向かうように調節を行いながら作業療法を提供することで、初めて主体性の元に自己の意味のある作業を遂行し、良循環を構築できる基盤が形成されてくるのではないでしょうか?

ADLや運動麻痺、感覚障害のように、定量化することが可能な要素が重要視されてしまうことは、医療の世界ではスタンダードであり、質的研究が認知されていくには、まだまだ時間が必要という印象があります。しかし、ADLや身体機能が重要視されているからといって、ADLや機能回復を作業療法の目標にすることは間違いです。作業療法士1人ひとりがそのことを認識し、日々の臨床を大切にし、質的研究に励むことで、少しずつ戦後輸入された、医学モデルやパターナリズムを主体とした作業療法の負の遺産を清算していけたら作業療法の未来は少しは明るいんじゃないかと思います。

僕はいつも夢ばかり見ています。夢を語ります。夢を語った上で実行可能な計画を立てたいと思っています。夢を見ず、夢を語らず、計画だけを立てると、様々な制約の中で、いつの間にか本質を見失ってしまう危険性があります。医療現場の中で実際たくさんみてきました。だから僕は自分の本文を見失わないためにも、いつも夢をみていたいのです。

某協議会には、いい加減PだかOだかわからないような“POT”を増産するような研修会は考え直してほしいな~なんて言う前に行動するか。一歩ずつ・・・


2 件のコメント:

  1. おせわになってます。
    夢を見ながら、前向きに、ですね。

    ありがとうございます。

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  2. kibiさん 新婚生活はいかがですか(^o^)丿
    本当におめでとうございます。

    今、職場も色々な意味で過渡期を迎えていますね!
    課題は山積みですが、皆で楽しんで乗り越えましょう!

    いつもありがとうございます

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