20121214

協働の始まりを共に宣言すること 〜12月9日 in 兵庫〜


12月9日,兵庫県で,作業に焦点を当てた実践研修会が開催されました.
いや~熱い一日でした.400名以上の参加をいただき本当にありがとうございました.


友利さんは,作業に焦点を当てた実践についての総論.そして作業療法のこれからについて講演してくれました.難解な理論やプロセスモデルを理解することに苦労していた方達も,作業療法のあるべき構造や立ち位置について理解を深めることができたと思います.


竹林さんは,作業に焦点を当てた上肢機能訓練についての講演です.機能訓練というと,徒手的で受動的な印象を持っているセラピストも多いと思います.しかし今回の講演を聞いて,作業療法士が行う「真の機能訓練」は,作業に焦点を当てた綿密な目標設定と難易度調整の元に,クライエントが動機付けられ,作業に参加し,作業の可能化を通して更にその動機が強化され,クライエントが自らの力で上肢を使って生活を豊かにしていく.結果的に機能も回復していくものです.今回の講演で,真の機能訓練は,作業に焦点をあてた目標設定が不可欠であり,とても科学的でありクライエント主体であることが理解できたと思います.


原田さんは,地域でどのようにして効果的な連携ができる基盤を作ってきたのか.その軌跡を講演してくれました.関わる全てのスタッフをクライエントと捉え,スタッフにCOPMを実施.一見すると別々の目標や関心を持っているかに見えた他職種も,本当はクライエントが大切な作業に従事して,イキイキと生活することを望んでいるんだ.という事実を,チーム全員で認識し合い,クライエントの作業に焦点を当てたチーム支援の基盤を作っていったという内容でした.他職種との関係に悩む多くの作業療法士達にとって,とても参考になり,そして希望を持てる内容だったと思います.



今回は4名の講演に加えて,3名の先生方によるライトニングトークも開催されました.



藪脇先生は,高齢者のための包括的環境要因調査票(Comprehensive Environmental Questionnaire for the Elderly :CEQ)を紹介してくれました.安全を優先した環境設定は,確かに転倒などのリスク軽減にはなるかもしれません.しかしクライエントの真の健康を支援するためには,作業の可能化に焦点を当てた環境設定が重要であり,作業の観点からの環境評価が不可欠です.CEQは今正に求められる環境評価だと思います.



寺岡さんは,OBP2,0の紹介です.作業療法という「手段」の有効性を最大限に発揮するためには,作業機能障害の改善とともの,実践における信念対立の解消が不可欠です.今までの作業療法理論の構造の中に,信念対立解消アプローチを組み込んだ新理論は,とても現実的で実践的です.鎌倉先生が,「大理論,つまり設計図としての理論はもう出尽くしたと思う.それは確かに必要ではあったが,もう流れは定まったと思う.これから必要なのは実践理論である」と書籍の中で語っていたのを思い出しました.正にこの言葉の答えを具現化した理論ではないでしょうか.今後がとても楽しみです.



平松さんは,犬の散歩に焦点を当てた実践報告です.あの日,あの場所で,臨床2年目の彼が登壇したことの意義はとても大きいと思います.多くの若い作業療法士達に勇気と希望を与えた報告だったと思います.



そして僕は今回,面接評価・目標設定についてのお話をさせていただきました.協会が「生活行為向上マネジメント」を推進していることからもわかるように,現在,作業に焦点を当てた実践が叫ばれています.

作業とは,言うまでもなくクライエントの作業であり,作業に焦点を当てた実践を行うためには,セラピストが勝手に目標を設定することはできません.クライエントが,よりよい作業的存在になれるように,クライエントとセラピストが目標を共有するというプロセスが非常に大切になります.

目標を共有するためには,クライエントが,作業療法を理解し,作業療法の目標設定に主体的に参加することが重要になります.そこで重要になるのが,面接評価です.

現在,「作業選択意思決定支援ソフト:ADOC」や「カナダ作業遂行測定:COPM」「作業に関する自己評価:OSA-2」など,クライエントとセラピストが対話する評価法は沢山あります.今回はその中で,ADOCを使用した僕の実際の面接評価を見てもらいました.

他人に面接評価を見られるのはモチロン初めてであり,少し恥ずかしかったですね(笑)しかし研修会のために動画撮影を快諾してくれたクライエントのためにも,ぜひ有意義な時間にしたいと頑張りました!

今回のお話で,僕が一番伝えたかったことは,作業療法は,クライエントの主体性な参加が何よりも大切だということです.

ですから,面接評価は「情報収集」ではないのです.面接評価は,クライエント自身がこれから自分が参加する「作業療法」を理解し,自分の取り戻したい生活を見つめ,その生活を構成する作業や,作業に絡みつく想いの全てを作業療法士と共有し,明日からの協働の始まりを宣言する時間であるべきなのです.

反対に,いくら巧みな話術で会話を盛り上げることができたとしても,恣意的で,クライエントの語りを誘導しようとする面接や,クライエントの世界に寄り添う姿勢を持たない面接は,効果的な結果をもたらさないと思います.

今回参加してくれた皆様が,少しでも明日の臨床に役立てていただけたら,そして,皆様のクライエントの自己実現に,少しでも寄与することができれば,こんなに幸せなことはありません.

参加してくれた皆様.本当に,本当にありがとうございました.

研修会後,今回の動画撮影に協力してくれたクライエントのSさんに研修の成功を報告し,「多くの作業療法士が面接評価に悩んでいます.でもSさんのおかげで,色々なヒントを得ることができたと思います」と伝えると,声を挙げて泣きながら喜んでくれました.その後で,「俺の生活は俺しかわかんねーもんなぁ」という語りがとても印象的でした.

撮影を快諾してくれたSさん.本当にありがとうございました.
今回の講師は,僕ではなくてあなたでした.











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