20110225

誰が作業に焦点を当てればいい?






季節外れの写真ですが、これは僕の職場から20分程の所にある白糸の滝です。
安達太良山の登山道入り口に車を停めて、歩くこと15分、
この滝が現れます。


滝を横目に見ながら、更に細い山道を10分程進むと、
沼尻温泉の源泉に辿りつきます。


そこからは白色の沸騰した源泉が湧き出ていて、
近くを流れる川に、その源泉が混ざりこむ地点があります。





そこが丁度良い湯加減で入浴を楽しめる”秘湯”です。
川の水と混ざり合った源泉は、薄い水色に光り、
幻想的な姿で僕達を迎えてくれます。


以前、後輩や兄弟と数回この秘湯には通いました。
今はおそらく雪深くて、この場所まで行くことは困難だと思いますが、
また春が来たら入りたい穴場です。


この沼尻から車で5分の所に、不動滝という立派な滝があります。




毎年必ず僕は娘を連れてこの滝を訪れます。
この滝は僕にとってのパワースポットです。
水しぶきを一杯浴びながら、娘とたっぷり遊んできます。


この滝のすぐ近くに、僕のクライエントのMさんは暮らしています。
炭焼きをしながら暮らしていたMさん。膝や腰はボロボロです。
今回は脳梗塞で軽度の右麻痺を患い、ウチの回復期病棟に入院してきました。


先日MさんにADOCを実施しました。入浴など、ADLを中心とした作業を
Mさんは選択しました。仕事一筋の生活を送られていたようで、
趣味などの作業は全く選択しませんでした。


数日後、家族が来院した際、ADOC面接の結果や、ADOCの目的を家族に説明しながら、
Mさんの生活を家族から聴取しました。


すると、家族から色々なMさんのエピソードを聞くことができました。


戦後、帰国が許されず、何年もMさんはシベリアに抑留されていたこと・・・
厳寒の地で、満足な食事も休息も与えられず、毎日強制労働の日々を過ごしていたこと・・・


帰国後も、休むことを殆どせず、家族を養うために、炭焼きをしながら
必死に生計を立ててくれたこと・・・


そんな生活の中で、唯一の楽しみは、お風呂だったこと・・・


家族は僕に話してくれました・・・


家族は続けます・・・


これからは、膝も腰も悪いし、あまり活発な生活は無理でしょうね・・・


だからデイサービスなんかを利用しながら外に出る機会を作ってほしいと思ってるんです・・・


でもジイチャンは風呂が大好きだったから、どうしても風呂だけは
家でゆっくりと入らせてあげたいんです・・・


家族からこのような提案がありました。


家族が心配していたこと、家族から表出されたことは
最初は歩行が可能になるのか?どんな介助が必要になるのか?でした・・・


ADOCの目的と、面接結果を説明した後は、家族からも、
Mさんの作業に焦点を当てた発言や希望を聞くことができました・・・


家族には、おそらく大きな身体介助は必要ないだろうということ、
椅子や道具の工夫が一部必要になるだろうということ、
入院期間中に、早期から定期的に入浴訓練に立ち会ってもらいながら、
家族にも慣れてもらいたいということを説明して、報告を終了しました。


OTは、作業に焦点を当てた面接や介入を行います。
しかし、クライエントの多くは、退院後の生活を1人では成立させることができない
人が殆どです。皆何らかのサービスを利用したり、人の手を借りて生活しています。


どんなにOTが、作業に焦点を当てて介入を行っても、生活する環境に関わる
人たちが、クライエントの作業に焦点を当てずに、医療的視点や、介護的視点のみで
クライエントを支援し続ければ、クライエントの生活は、マイナスの項目を補填するような支援でのみ継続されることになるかもしれません・・・


クライエントに関わる、関わるであろう人達も、皆クライエントなんだという認識が
大切なんだと思います。専門性の違いは当然ありますが、
クライエントの意味ある作業を共有すること、遂行が可能となるよう支援することに加えて、
クライエントにとって大切な作業の意味を関わる全ての人たちへ発信し続けることも
作業療法士にとって大切な任務なのです。









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