昔、芥川賞作家の玄侑宗久さんの元に、ある外国人が尋ねてきました。玄侑さんは、その女性を座敷に通し、しばらく話をしたそうです。その女性は、とにかくよく笑うのです。玄侑さんが何か喋ると、すぐに大きな声で、顔をクシャクシャにしながら笑うのだそうです・・・
なぜそんなに大笑いをするのか?玄侑さんは分からずに、しばらく時間が過ぎるのですが、何故かだんだんと玄侑さん自身も楽しくなって、一緒に笑ってしまうようになったのだそうです。
今でも時々、その女性のことを思い出すそうですが、話の内容は殆ど覚えておらず・・・
ただあの時の彼女の笑った顔と、笑い声が脳裏をよぎり、また楽しい気持ちになるのだそうです。
確かに楽しそうな人の近くにいると、自分も気分が良くなります。つまらなそうな人、不満だらけの人が近くにいると、息がつまりそうになります・・・自分の精神状態や表情が他者に与える影響は案外大きいようです・・・
クライエントに対面する時も同じです。自分の仕事が好きで、クライエントのことが好きで、クライエントの為に準備をしっかり行った介入は、クライエントから拒まれることはまず無いのではないでしょうか?(一生懸命考えた介入は、介入方法や態度を熟考するからかもしれませんが・・・)
昔を振り返ってみると、若い頃は、何度かクライエントから介入を拒否されたことがありました・・・でもここ数年は全くそんなことはありません・・・
拒否されたらどうしよう・・・表情がこわばり気持ちに余裕がなくなります。声かけも、なんとか拒否されないような機嫌を伺うような声かけになります・・・そして拒まれます・・・そして更に自信を失い拒否を恐れるようになります・・・その時間がくるのが嫌になり、拒否されて、その日の介入を免れることに安堵を感じたり・・・・負のスパイラルに突入していきます。
若いというだけで拒否されることがあります
女性というだけで拒否されることが今だにあります
クライエントの主観によって、拒否されやすい条件というのがどうしてもあります
負のスパイラルに陥ったセラピストが、自分の力で這い上がることは易しくありません・・・
でも”拒否された”という言葉を使っている内は、クライエントに原因を見出しているのです。
毎日の業務は組織化されて、習慣化されて、意識を開放できる状態になります。それは裏をかえせば気持ちが伴わなくても、表面的な作業は可能になるということです。
どんなに組織化されて、習慣化された作業療法業務でも、いつも考えるのです。自分が何をする人なのかを・・・目の前のクライエントにできること、すべきことを・・・自分の本分を意識して、必要な準備をしっかり行って、そこから生まれた情熱を持ってクライエントの前に立つからこそ笑えるのです。クライエントを笑顔にする笑顔が生まれるのです・・・クライエントも自分の未来に向かって笑えるのです。この人といると、なんか楽しい・・・何か前向きになれる・・・そんな環境因子にOTはなりたいものです。そんな環境因子でありながら、かつしっかりとした協業関係を築きたいものです。
作業療法という自分の意味ある作業を意識して、喜びを感じて、未来を感じて、準備して、それを大切に遂行すること・・・その時に生まれてきた感情は、あなたがクライエントに到達してほしい感情と似ているはずなのです・・・
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