面接評価が苦手だと訴えるセラピストをよく見かけます.
確かに面接は簡単ではありません.
しかし,話を聞いてみると,クライエントが大切な作業を表出してくれないことを
「上手くいかなかった面接」と捉えているセラピストが多い気がします.
はたしてそうでしょうか?
面接技術の研鑽はもちろん大切ですが,クライエントが作業を表出できなかった事実は,
「失敗」ではなくて,「評価結果」と考えるべきです.
「面接が上手くできなかった」と考えるのではなくて,
「まだ自分の大切な作業に目を向けられない段階」
と足らえたほうが妥当なクライエントも多いのです.
そこを見逃さないでください.
大切なのは,その後の介入です.
おそらく,面接で作業にうまく焦点を当てられなかった場合,
ボトムアップアプローチに転換してしまうセラピストが
多いのではないでしょうか?
もしくはなるべく拒否されないプログラムを実施することを
無意識に選択していたり・・・
クライエントが大切な作業に焦点を当てられない理由は沢山あると思います.
どんな理由であれ,クライエントは多くの作業を剥奪された状態である
ことは間違いないでしょう.
そこで必要になることは,やはりEnabling Occupation (作業を可能にすること)
の体験だと思います.
作業の可能化とは,単にできない動作が可能になるということではありません.
その作業が「できること」に加えて,
「できる」と心から思えること,
毎日のわずかな変化を感じ取れること,その変化を認められること,
その変化が次の,そして先の何に繋がるのか?それを感じることができること,
その変化を通して,大切な人,物,立場,役割,場所,時間と結びつけること,
結びつけると思えること,
自分の新しい価値観が生まれること,
これらの全てを支援することが大切です.
それは,技能の向上を支援するだけでは不十分です.
関わりの中で生まれる一瞬の変化を見逃さず,聞き逃さず,
技能と心の動きに寄り添わなければそれは実現できません.
面接が上手くいかないクライエントに対しては,
苦手意識をもってしまうセラピストがいます.
そうなると,介入も「訓練」要素が強くなります.
コミュニケーションも機嫌を伺うようなスタンスになり,
結果,クライエントの技能が向上しても,
その現象は,Enabling Occupation とは程遠いものになってしまいます.
あなたが上手く作業を聴取することが,作業療法の成功ではありません.
クライエントが大切な作業を通して健康を取り戻すことが目標なのです.
自分が成功するかどうかではなくて,
クライエントが成功するかどうかで臨床に望んでください.
どこかでこんな言葉を聞きました.
「失敗など存在しない,ただフィードバックがあるだけ」
正にその通りだと思います.
僕たちは,クライエントの幸せの為に存在します.
だから,どんな結果であれ,全ての結果は次の支援のための情報なのです.
「失敗した」とか,「成功した」とか,
クライエントに関係のない感情に縛られないでください.
「結果」はクライエントの中にのみ存在します.
「成功」はクライエントの中にのみ存在します.
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