夕方、少し時間が出来たので、新人のSさんと一緒に病棟を離れ、作業療法室に向かいました。PC室でクロスインパクトマトリックスの説明をした後に、近くで介入を行っていた後輩のIさんとクライエントEさんの元へ。Sさんと一緒に見学することにしました。
Eさんは、感覚の脱失した左手の巧緻動作と、力の微調整を行う練習をしていました。Eさんはイキイキとした語り口で僕たちに話します。ずっとバイクが大好きで、オフロードのチーム競技に参加していたこと。度々仲間と全国をツーリングしていたこと・・・みんなで盛り上がりました。
僕は正直心配していました。入院直後から、Eさんがバイク好きで、再びバイクに乗ることを目標に、日々のリハに励んでいたことを知っていました。僕もIさんに相談されて、何度か彼の身体機能を評価し、プログラムのアドバイスをしたことがありました。
画像や発症時期から考えても、バイクに再びまたがることは、正直厳しい状態でした。しかしそれをEさんには伝えることはせず、目標に向かう協業の中で、彼の能力の自己認識の変化を見守ることにしていたのです。
久しぶりに彼とバイクの話をしました。彼は以前と同様に、バイクに対して熱い情熱を持ち続けていました。しかし、以前と少し様子が違いました。
おそらくもう競技に出ることはできない。でも毎日の練習経過から、整備はまた出来るかもしれないと思います。チームに同行して、レース前後のマシン整備に関われたらと思います。ボルトはトルクレンチで締めていくので、長めのレンチを使用すれば、力の無さは代償できると思います。問題はビスです。ビスは繊細に真っ直ぐに入れることが要求されるので、今、その感覚を掴む練習に力を入れています。
彼は歩行レベルでADLが自立し、日常生活は全く他人の手を借りずに生活することが可能です。もうすぐ車の運転も再開予定です。
彼は自分の大切な作業に、新しい自分がどう関与するか?していけるか?を非常に現実的なビジョンを描いていました。そして実現に向けてIさんと協業していました。
~がしたい。でも今は手が完全に治っていない!だから今は手を治すことだけに専念します・・・意味ある作業を共有していても、結局焦点は身体機能の改善にのみ当たっている・・・機能回復への固執が、実際の作業遂行の障壁になるということはよくあることです。
でも彼は今の体で、意味ある作業に従事する新しい作業形態を思い描いていました。それに向けて現実的な練習をしていました。意味ある作業への想いが技能を僅かに追い越して、その想いが技能の現実的な形を工夫させ、実現に向けて加速するような協業をしている後輩のIさんの姿に、すごく嬉しくなりました。新人のSさんにも、作業療法とは何か?を考えてもらえる理想的な場面を見せることができました。
これから仲間と新しい作業が始められるかもしれない・・・だからIさんのクライエントは、目の前のEさんだけじゃなく、他にもいるかもしれないね!それだけを伝えてスタッフルームに戻りました。今日もみんなありがとう。
~coming soon~
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