少し恥ずかしい話ですが,僕の指先はボロボロです.冬場は特にひどく,ずっと痛みとの戦いです.
クライエントと一緒に雪の中を歩いて買い物に行き,調理練習を行い,その後で温泉で入浴訓練をする…
作業に焦点を当てた実践を心がけていると,自然に指先はこうなります.毎日が痛みとの戦いですが,
臨床家でいるウチは,ずっとこんな手でいたいといつも思っています…
武芸の世界には,「守破離(しゅはり)」という言葉があります.
技術の習得のプロセスを表現した言葉です.
まず最初は,師匠から習った型を「守る」ことを何よりも重んじます.
型を習得したら,少しずつ自分なりのアレンジを加えて,型を「破り」
自分なりの型を作っていきます.
そして最後は,過去の型から解き放たれるように「離れ」て,自在の境地に
達するというのです.
つまり,はじめにしっかりと型を身につけることで,
はじめて高度な応用や豊かな個性の発揮が可能になるのです.
作業療法における「型」とは一体なんでしょうか.
評価や手技など,色々な階層において
「型」と呼べるものは存在するかもしれません.
しかし,実践における「型」とは,事例報告だと僕は考えています.
事例報告は,単なる経験のまとめではなく,
セラピストの思考を体系化するという大切な役割を担っています.
思えば学生時代,自分が教科書から学んだ知識を,
実習でどのように活かせばよいか,
僕は主体的に考えることができませんでした.
その時に僕がとった行動は,先輩のレポートやレジュメを
「真似る」ことでした.
自分の中に散在している知識を,先輩が作った「型」にはめ込んで,
自分がどのように知識を使うのかを学んでいったのです.
しかし当時は完全にボトムアップの時代でした.
ボトムアップの「型」で学んだ僕は,
ある時から「作業療法とは?」の問いに悩み続け,
今の自分の「型」を作るまでに,相当な年月を必要としました.
今,必要なのは,若い作業療法士が,より早い時期に,正しい「型」を
作ることができるような事例集だと思っています.
しかしながら,MOHOの事例集やAMPS事例集など,
一部を除いて,作業に焦点を当てた事例報告が充実しているとは
決して言い難い現状があります.
なければ作ればいいですね…今,作っています(笑)
今年の冬にはみなさんのお手元に届くと思います.
多くの学生さんや,若い作業療法士達が,
より早く自在の境地に達することができるように.
今年もよろしくお願いします.
2013年1月13日 齋藤佑樹
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