仮に障害を有する前の作業形態を維持できないとしても
可能化のための手段を作業療法士は沢山もっている.
時には心身機能に働きかけたり,
時には方法を工夫したり,
時には環境を変えたり.
その手段は無数にあると思う.
大切なことは,その手段を採用した理由だと思う.
クライエントの特有の文脈の中で作業は存在意義がある.
作業の可能化とは,単にその作業が遂行できるということではなくて
大切な文脈に結びつけるということ.
文脈の側面には環境があり,役割があり,動機があり,課題があり,文化があり,
社会があり,制度があり,心身機能があり,時間があり,適応がある.
その包括的共有によって,初めて「その作業」が理解できる.
また,作業を「知る」事ができたら,作業の観察を大切にしたい.
セラピストは作業の可能化を妨げている原因を
心身機能に見いだそうとする傾向がある.
でも文脈を共有し,実際の遂行を観察したら,
可能化を制限している要素や尊重すべき要素
環境から要請される水準や活用できる資源など
可能化に必要な支援の方法をより鮮明にすることができる.
それは大切な文脈から逸脱しない「真の」可能化に向けた恊働になる.
ADOCはクライエントと作業療法士が,イラストを活用しながら
作業に焦点を当てた恊働を支援してくれる.
クライエントはイラストが目の前にあることで
自分の大切な作業を想起することが容易になり,
また作業に焦点を当てた意思決定に参加しやすくなる.
作業療法士は,作業に焦点を当てた恊働的な関係を
築きやすくなり,作業療法士を作業療法士にしてくれる.
容易に作業に焦点を当てられるツールであるからこそ
その作業の文脈を大切にしてほしい.
ADOCのイラストは扉だと思ってほしい.
絞り込んだ5つの作業だけに注目しないでほしい.
選択した全ての作業の連関は,必ず目の前のクライエントの,
その作業の可能化の条件を照らしている.
文脈を無視した支援は,「作業」を「動作」にしてしまう可能性がある.
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